第49章 Wound!〈天晶 瑠璃〉
『今日のノート、後で送っておくね』
「ありがとう。バレエの方は?」
『これから練習に行く所なの。なんだか、やり始めてから大好きになっちゃって。毎日先生の所に通ってるんだぁ』
「無理はしすぎないでね」
『うん。今ならヒロト君の気持ち分かるよ。好きな事、時間の許す限りやっていたいって思うもん』
「熱中する」ってきっとこういう事を言うんだ。でも、これでヒロト君も見守っている側の気持ちが少し分かってくるかもしれない。
「俺も、今なら瑠璃の気持ち分かるよ。見守る側の気持ちって、こんな感じなんだね」
『なんとも言えない複雑な感じでしょ?』
「確かに」
二人、顔を合わせて笑い合った。なんだか、ヒロト君の笑顔を久し振りに見た気がした。
『なんか、ヒロト君が笑ってるの、久し振りな気がする』
「そうかな」
『駄目だね。私、彼女なのに自分の事しか考えてなかった。ヒロト君の楽しい事も考えて無かったね』
「俺は瑠璃が楽しい事なら何でも楽しい」
『そうやって、格好つけないで。私は、そのままのヒロト君が見たい。だって…そうじゃなきゃ私のいる意味が無いんだよ…?』
何も…聞いてない。バレエ留学の事も凄いって言ってくれたけど、きっと本心はそんなんじゃ無い事、分かってた筈なのに。
「本当はバレエ留学だって嫌だよ。だって瑠璃と一年も離れ離れになるなんて、俺は嫌だ。でも、そんな事言ったら子供だ、とか言われてしまいそうな気がしてたんだ」
『ううん。素直に言ってくれた方が嬉しい。バレエ留学はヒロト君が何と言おうと行くつもりだよ。だって、自分の好きな事を追求したいから。でもさ、他の事も一杯不満言ってよ。流石に悪口とか言われたらへこむけど…』
「瑠璃のそう言う所が嫌だ」
『えっ…』
「俺の事…何でも許しちゃうだろ?でも、俺はその優しさに甘えようとしてる。だから嫌なんだ」
『良いよ。一杯甘えて』
私が今迄甘えてきたから。今度は私が返してあげたい。だって、私の中の一番大切な人の中の一人なんだから。
「サッカーやりたいし、出来れば今すぐにでも瑠璃にキスしたいし、寧ろベッドインしたいし。それで持って瑠璃のバレエしている姿をずっと見ていたいし…」
『わああああ!も、もう良いって…!』
「まだまだ沢山あるよ」
『ちょ、ちょっとストップ。分かった。私に出来る事はするから。ほら…ハグ位なら出来るから…』