第49章 Wound!〈天晶 瑠璃〉
鬼道君のラインにこう書いた。
〈乃愛ちゃんから婚約者騒動の事聞きました。その件に関して、私から一つ提案をしたいと思います。話を聞く限り、その女の子は凄く鬼道君の事を好きなんだと思います。だから、大事な事は「君と結婚しても一生好きになれない」とはっきり伝える事。出来れば遠回しでは無くストレートに。そしてその様子を電話で星羅ちゃんに繋いであげると星羅ちゃんは飛んで跳ねて喜ぶと思うよ〉
案外早く既読がついた。鬼道君自信、結構悩んでいるのかもしれない。
〈お前のアドバイスで道筋が開けた。礼を言う〉
〈追記:私が居なくなれば、星羅ちゃんはもっと心を閉ざしてしまう。だから早めにケリをつける事をお薦めします〉
〈分かった〉
最初の方に触れてくれなくて助かった。後は、鬼道君にかかってるよ。
ーー翌日
『二人とも。大事な話があるんだ』
「瑠璃…?」
『私、七月からアメリカにバレエ留学をする事になったの』
「えっ…!凄いじゃん!」
「瑠璃ちゃん、最近ずっと頑張ってたもんね!」
『うん、だから応援してほしい。やっと自分が一番夢中になれる事、見つけたから…!』
「瑠璃、変わった」
「うん、凄く」
『そうかな?最近よく言われる気がして…』
「今迄なんかどっち付かずでふわふわしてたけど、一本の筋が通ったみたいな、そんな感じ」
確かに、熱中できることが見つかって一直線に進める様になった。だからかもしれない。
「やっぱり、イナズマジャパンのマネージャーになって正解だったね」
『うん!』
「三人とも、サッカー以外の事やってるけど、でもマネージャーの経験が私達を強くしてくれた」
「後は星羅だよ」
『そうそう!』
私、二人には幸せになってほしい。こんな終わり方じゃ駄目だ。
「私、星羅には自分の後悔しない道を歩んでほしい」
『私も同じ気持ちだよ。だから…自分に遠慮はしないでね』
「…分かった。約束する。二人とも本当にありがとう」
そりゃそうだよ。中学からの腐れ縁なんだから。個性はバラバラで絶対合わなさそうって言われてた私達だけど、でもこんなに強固な絆になった。絆の力は時に権力さえも上回る。
「起立、礼」
今日の授業も終わって、一目散に教室を去る。病院に行ってヒロト君の顔を見て行きたかった。輝夜ちゃんとの約束の時間まではまだ時間がある。
『ヒロト君』
「瑠璃、おつかれ」