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Break! 【イナズマイレブン】

第49章 Wound!〈天晶 瑠璃〉


両手を広げればすぐに抱きついて来てくれる。病院の匂いとヒロト君の匂いが混ざったモノが鼻腔を通過していく。

『あのね。今、ヒロト君に会えた事に凄く感謝してる』
「どうして?」
『だって、ヒロト君が居なかったら、私ここまで来てなかった。ずっと何もしないままの自分だった。ヒロト君が私をここまで連れてきてくれたんだよ』
「瑠璃が自分で気付いただけだよ」

頭を優しく撫でてくれる仕草に自然と頬が緩くなる。その手がお父さんみたいで、何故だか安心するのだ。

『大好き』
「うん」

返事は求めて無かった。だから呟くような声でそっと口にした。

『私、そろそろ行くね』
「気を付けて」
『うん。また明日来るから』
「ああ」

病室を出るのが名残惜しいけど、約束は約束だから行かなくちゃいけない。病室を出る迄は極力ゆっくり歩いた。君とまだ一緒にいたい。でも、夢を追いかけたい。だから、いつまでも留まっている訳にはいかないんだ。

「あ、瑠璃」
『輝夜ちゃん。早いね』
「なんか気合い入っちゃってさ」

やっぱり気持ちは同じだ。夢を追いかけ続ける為なら、どんな努力でもしたい。だって其れ程夢中になれるものがやっと見つかったんだから。

「良い顔してるわね。瑠璃」
『え、そうですか?』
「ええ。とっても嬉しそうよ」
「え〜なに〜?もしかして好きな人〜?」
『え、え〜っと…』
「わぁ…図星だ!」

先生までクスクス笑ってるし。恥ずかしいんだけど…!

「今日のレッスンはここまでね。後はストレッチを忘れない事」
『はい』
「先生!瑠璃って本当に毎日ここに来てたんですか?」
「ええ。イナズマジャパンのマネージャーだった時以外はずっと来てたわよ。皆に追い付きたいって必死に練習していたわ」
「やっぱり、瑠璃は凄いよ…!私も負けられないな」
『ううん。長年ずっとやってきた皆よりは全然足りない。もっとやらなくちゃって思う。ただ、体調を見極める事も大切だから、そういう所も鍛えていきたい』
「大丈夫。貴方ならきっと出来る」
『ありがとうございます。先生』

大丈夫だよね。努力はそのまんま自分に帰ってきた。受験だってそうだった。ただのやっただけは努力じゃない。考えるからこそ努力なんだってどっかの誰かが言ってた気がする。

「羽ばたこう…!瑠璃!」
『勿論!』

貪欲に求めて強くなるんだ。羽ばたく為に。
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