第49章 Wound!〈天晶 瑠璃〉
『はい』
「貴方はもう『プリマ』なの。生半可な演技なんて許されないわよ。多くの者達の意志を背負って貴方は『プリマ』と名乗っている。自分の限界を作らずに、貪欲に挑戦していきなさい」
『はい!』
「それと、本題はこっち」
先生の手には何だか文章がみっちり書かれた紙があった。
『それは…何ですか?』
「貴方と、もう一人にバレエ留学の推薦が来てる」
『もう一人は…』
「言わずもがな、輝夜よ」
『輝夜ちゃんは行くんですか?』
「ええ、ご両親も二つ返事で了承してくれたわ」
『行かせてください…!』
「補助金があるから、貴方達はお金を払う必要は無いわ」
『え…本当ですか⁉︎』
「気にしないで、自分達のレベルアップを目指しなさい」
バレエをもっと沢山出来る…?そんなの…やるしか無いよ!
『いつからですか?』
「今年の七月から一年間」
『分かりました。ありがとうございます』
七月から…。ヒロト君が退院したらすぐに行かなきゃいかなくなるのか…。ヒロト君とは遠距離恋愛になっちゃうなぁ…。
『ねぇ…輝夜ちゃん』
「留学…頑張ろうね」
『え、何で分かったの?』
「見れば分かるよ。目に、炎が灯ってる。始めた時はぼんやりしてる子だと思ったけど、今は違う。意志がある。何が何でもやり遂げたいっていう想いが見える!」
『私、初めてやりたい事見つけられた。だから、この想いを無駄にしたく無い。いつか大きな花を咲かせられる様に、今からでも精一杯輝きたい!』
「よっしゃ!私も頑張る!絶対に、私もプリマになってみせる!」
絶対に…成し遂げたい。私…今までの自分とは明らかに違うって分かったから、この勢いを無駄にしたく無い。
「アメリカかぁ…てっきりヨーロッパ辺りの所だと…」
『でも、凄かったよ。学校名見たら、かなり有名な名門校だった』
「嘘…もしかして…」
『そのまさかだよ。アメリカでトップと言っても過言じゃない…』
「私達、そんな所に行けるの⁉︎」
『そうだよ。一緒に英語の勉強もしようよ』
「私…英語苦手…」
アメリカに行くからには挨拶程度の英語は必須。それ以上のものも求められるし、何より先生の言葉を聞き分けられないと意味がない。
『ねぇ、今日の帰り、本屋さんに寄って良い本見つけようよ。こうやって帰りに英語の勉強すれば、行くころには少し上達してる筈だよ』
「うん!」
『よし、行こう!』