第47章 FFHI Ⅹ〈綾織 星羅〉
今日は久し振りに歩いて帰ってみようか。街を見るとイナズマジャパン一色で、私達マネージャーの顔写真も堂々と載っている事に驚いた。
『そっか…一番になったんだっけ、私達』
あんまりこれといった感覚が無くてただただぼうっと眺めていた。
「もしかして、イナズマジャパンのマネージャーの綾織 星羅ちゃんですか?」
『は、はい』
「やっぱり!テレビで見てからファンなんです!」
ふぁ、ファン⁉︎マネージャーにもファンって出来るものなの⁉︎
『あ、ありがとうございます!』
「あの、サイン貰っても良いですか?」
『は、はい…!』
サインなんて初めて言われた…!色紙に筆記体で自分名前を綴った。
『お名前、何て言うんですか?』
「僕、香崎 陸です!」
『香崎君、ですね…』
横に香崎君へと書いて色紙を手渡した。
『イナズマジャパンの応援、ありがとう』
「…はい!」
きっと、皆が頑張れたのは香崎君の様な応援してくれた人がいたから。応援してくれる人の力って実は本当に凄いもので、「頑張れ」の一言で選手を奮い立たせてくれる。
『河川敷…行こうかな』
最近行ってなかった。有人君のお家にお世話になってからは特に。
『寒い…』
河川敷に行くと、4〜5歳位の女の子がヴァイオリンを弾いていた。凄く綺麗な音…。しかもこの年齢でパガニーニを弾くなんて。
「お姉さん、何してるの?」
『え、私?』
「そう、お姉さん」
いきなり演奏をやめて話しかけてきたからびっくりしてしまった。
『私は別に何も…』
「何も無い顔してないよ。お姉さん」
『小さいくせに良く踏み込んでくるのね』
「よく言われる」
こんな子供に何八つ当たりしてるんだか…私は。
「お姉さんは音楽、好き?」
『うーん、まぁ』
「じゃあ、今からもっと好きにさせてあげる!」
もう一度ヴァイオリンを弾き出した。その子の音はとても楽しそうで、嬉しそうで…この子は無垢なんだと瞬時に察知した。
『君には…まだ知らない事が多すぎるね』
「どうして?」
『君はこれからもっと大人になる。そしたらきっと色んな事が分かると思うよ』
「色んな事を知ったからお姉さんはそんな顔してるの?」
『そうだね…』
「じゃあ、知りたく無いなぁ…」
『逆に色んな事を知らないとこんな顔も出来ないし、成長も出来ないよ』
この子は、もう色んな物を背負ってる。