第47章 FFHI Ⅹ〈綾織 星羅〉
「星羅…」
『どうかしましたか?“鬼道”君』
「もう名前では呼んでくれないんだな」
『もう、婚約者ではありませんから』
「二人で、どうにかする気は無いか」
『ありません。他人を巻き込む訳にはいきませんから』
「そうか…なら…」
『帰って下さい。貴方と話す事は、何もありません』
これ以上、会っている事がバレたら、本当に何があるのか分からない。此処で返しておくほうが無難だろう。
「…分かった」
『…』
「最後に一つだけ聞かせてくれ」
『何ですか』
「お前は、俺の事をどう思っている」
『さぁ…如何なんでしょうね』
私は嘘は吐けない。かと言って、大好きだという訳にもいかない。だからこそこうして誤魔化すしか道が無かった。
「今の一言で確信した」
『…そうですか』
「お前の望み通り、今回は失礼する」
『もう来なくて良いですから…』
もう、これで迷わずに済む。扉を閉める音が聞こえたら、少しだけ肩の力を抜いた。
『如何したら…この想いは消えるんだろう…』
バルコニーから君が帰る姿を見ていた。一瞬顔上げた時に視線がかち合う。その時の君は明らかに「笑って」いた。
『どうして…』
何故、君がそんな風に笑っているの。私に愛想を尽かしたから?理由なんて探せば幾らでもあるのに考えてしまう。やめよう。これ以上考えるのは。じゃなきゃ、私は可笑しくなりそうだ。
ーー翌日
「おはよー!星羅!」
『おはよう、乃愛ちゃん、瑠璃ちゃん』
「今日は鬼道君と一緒じゃないの?」
『今日日直だから。ちょっと早く来ちゃった』
「そっか。お疲れ」
『ライオコット島、楽しんできた?』
「うん!楽しかったよ!」
良いなぁ。私も、有人君が一緒なら回る気になれたのに。
「星羅にちゃんとお土産買ってきたよ!はい!」
『これって…』
「そう、三人のお揃い!」
『ありがとう…!』
これがあれば、有人君に近付けなくても何とか保っていけそうだ。
『あ、私ここだから』
「うん、じゃあまた昼休みね!」
『はーい』
いつも通り教室に入ると、もう既に有人君は登校していた。席替えで席は離れているので、あまり話さなくて済みそうだ。
「明日から二期休みだ。宿題もあるが、ゆっくり体を休めてくれよ?」
「はーい」
そっか、休みか…。何しようかな。本を買いに行こうか、それとも何処か喫茶店でゆっくりしようか。