第46章 FFHI Ⅸ〈天晶 瑠璃〉
「瑠璃ちゃん!」
『し…ろう…君…?』
「吹雪君、救急車だ!」
『ヒロト…君…?』
「豪炎寺君、救急箱を!瑠璃、具体的に何処を打ったか分かる?」
『多分…肘と…肋骨…』
「取り敢えず肘だけでも固定しよう。クーラーボックス取るけど、痛かったら言って」
『うん…っ…』
「我慢しなくて良いから。もうすぐ救急車が来る」
ヒロト君、早かった。肘も直ぐに固定してくれて、救急車が来てからも病院に着いてきてくれた。
『ごめんね、ヒロト君…』
「瑠璃が謝る事ないよ。寧ろ俺も行くべきだったね」
『マネージャーの私が迷惑かけちゃって、本当にごめんなさい…』
「クーラーボックスは重いから俺が持つって言っただろ?」
『う、うん。でも、先に行っちゃってたから…迷惑、掛けたくないと思って…』
「迷惑なんて、かけてなんぼだよ。彼氏なんだから。そうじゃなきゃ、俺がいる意味がないだろ?」
優しく撫でてくれる君の手が好きだ。こんな不甲斐ない私を許してくれる。なんて心が大きいんだろう。
『一週間位で治るみたいだから…それまでマネージャーの仕事出来ないね…』
「ちゃんと毎日観に来るから」
『ま、毎日じゃなくて良いよ。一週間経てば退院するんだから…』
「俺が来たいから来る。それだけなんだ」
おやすみと言って病室から出ていく。すると病室の外から声が聞こえた。
「ごめんね。ヒロト君、僕が居ながら…」
「いや、俺が先に行ったからだ。吹雪君のせいじゃ無いよ」
「…」
「でも、瑠璃を渡すつもりは毛頭無いから」
「気付いてたんだ」
「当たり前だよ。あれだけ瑠璃の事を見てれば、誰だって気付くさ」
ちょっと待って…。それって、士郎君が私の事、好きって事だよね…?全然気付かなかった。
「負けないよ。ヒロト君が少しでも隙を見せたら僕は…瑠璃ちゃんを攫っていくから」
「させないさ。隙なんて、見せるはず無いだろ」
なんかバトルが繰り広げられてる…。まさか士郎君が…。
『…』
他の人に好意を持たれて、しかもそれを初めて伝えられたのがヒロト君だった。最初は凄い猛アタック受けたから、成り行きで付き合って…でも、今は違う。私はヒロト君の事、大好きだ。だから、迷惑かけたく無いって思ったし、傷付けたくもない。そう思ってしまうのは、相手を想う気持ちが強いから。
『私、強くなるんだ』
甘えたままじゃ、駄目なんだ!