第46章 FFHI Ⅸ〈天晶 瑠璃〉
総当たり戦を行った結果、4勝1敗で決勝トーナメントには勝ち進める事になった。
『やったね!ヒロト君!』
「ああ!」
手を取り合って喜んだ。これで世界一にまた一歩近付いたんだ。
「今日の練習!終わり!」
監督の掛け声と共に、ボトルをクーラーボックスに詰めてベンチ周辺の片付けをした。
『椿姫ちゃんは…あれ、いない…』
仕方ない。最初にバインダーとか片付けて、それからクーラーボックスを運ぼう。
「瑠璃、片付け中?」
『うん。バインダーを返してた所』
「そうか。他に片付ける物無い?」
『多分大丈夫』
「じゃあ、先に食堂に行ってるよ」
『うん。また後でね』
あれ、待てよ、私クーラーボックス置きっぱにしてた様な…。そうだ、行かなきゃ…。
「どうしたの?瑠璃ちゃん」
『ちょっとグラウンドに忘れ物…!』
急いでグラウンドに戻った。案の定クーラーボックスは置きっぱなしになっている。
『あれ…吹雪君だ』
「天晶さん」
『瑠璃で良いよ。吹雪君、練習してたの?』
「うん。僕の事も士郎で良いよ」
『そっか。もうすぐで夕飯だからそれまでには戻ってきてね』
「瑠璃ちゃんは?」
『私はこれ』
クーラーボックスの肩紐を持って片付け中という事をアピールした。
「瑠璃ちゃんさえ良ければ、僕の練習を見ていってくれないかな」
『良いよ〜?新しい必殺技とか?』
「丁度そんな所だよ」
『編み出すならドリブル技だよね。唯一持ってないの、それでしょ?』
「そうだね」
士郎君は基本氷とかに因んだ技が多い。
『あ、閃いた』
「え、何?」
『ホワイトアウトでどうかな。雪ばーって降らせてその間にドリブルで駆け抜ける』
「確かにそれ良いかもしれないね」
『え、めっちゃ適当に言った…』
「え、そうなの?」
まさかのマジだった…。本当にそれっぽい単語言っただけなのに。
「でも、なんか無駄にカッコいい単語を考えるよりはシンプルで僕は良いと思うんだけどな」
『えええ…』
「吹雪ー!メシだぞー!」
「今行くー!それじゃあ、先に行ってるよ。アイデアありがとう」
『うん』
クーラーボックスの肩紐を掛けて階段を登ろうとした。何気重くて結構大変である。
『へっ…!』
踏み外した…⁉︎このままじゃ、落ちる…⁉︎
『うっ…』
地面に全身を強打した。凄い音に気が付いたのか何人か来てくれているみたいだ。