第45章 FFHI Ⅷ〈Girls〉
『あ、あの…明王君…』
「全く、泣き虫な姫サンだな」
『明王君も風邪引いてた時、ちょっと泣いてたよ』
「風邪の時は、涙腺緩んでんだよ。仕方ねぇだろ」
照れながら言う君が少し可愛いな、なんて思っちゃったり。
「笑ってんじゃねぇ!」
『だって…可愛いから…』
「うっせぇ…」
ポケットに手を突っ込んだままキスされる。さっきまで可愛いって思ってたのに、こういう姿見ると格好良いって思っちゃう。
「…口開けろ」
『え、あ…んっ…』
薄く唇を開くと、その瞬間に生暖かいものが私の舌を追い回す。
『あ…きお…く…ん…ちゅ…』
「黙ってろ」
明王君のと混じった唾液が口の端から垂れていく。頭が真っ白になって、何考えられなくなる。
「おーい!椿姫ー!もう行くよー!どこいんのー!」
乃愛ちゃんの声で我に帰る。そうだ…此処はパーティ会場だ!人目に付かない暗い場所とは言え、結構な事してた…。
『あ、あの…明王君…もうそろそろ…』
「もう少し我慢しろ」
口を離したは良いものの、私の肩に項垂れて離れてくれない。何かあったのかな…?
『ヤキモチ…妬いちゃった…?』
「るせぇ」
『ふふ、帰ろう、明王君』
「ちっ…」
今度は私が手を引いて歩き出す。素直じゃないし、褒めてくれないし、刺々しい言葉しか殆ど言わないけど。自分でも何でこんな人好きになっちゃったんだろうって思うけど。
『大好きだよ。明王君。これからも、ずっと…!』
私に出来るのは、そんな捻くれ者の君に素直な感情を注ぐ事。ありがとう、ごめんね、大好き。全部真っ直ぐに伝える事で君に信じてもらえたらそれで良いって思えるの。
「お前は素直すぎんだよ…!調子狂うだろが!」
顔真っ赤にして言っても何も説得力無いですけど。でも、ぶっきらぼうでも、捻くれてても、優しい事は私が一番良く分かってる。だから、彼の一番の理解者は私でありたいって思う。
『調子狂った明王君も好きだよ』
「ざけんな!はっ倒すぞ!」
『そ、それは嫌だ…』
でも、一番張っ倒されて痛そうなのは土方君かなぁ。背中の骨とか簡単にボキって折れそう。
「ったく、ほら、行くぞ」
なんだかんだ言いつつ手を出してくれるみたい。ゆっくりと手を添えて歩き出す。
『また、褒めてくれると良いなぁ』
「何か言ったか?」
『ううん。何も』
いつか、照れずに褒められる日を夢見て。