第5章 Light! 〈朝日奈 乃愛〉
『昨日よっぽど疲れたもんね。お疲れ様』
「ああ。夕香とお前が来てるからな。カッコ悪い所は見せられない」
『豪炎寺らしい。本当、カッコ良かったよ』
「ああ、ありがとう」
『送ってくれて、ありがとね。あ、ちょっと待ってて』
昨日急いで作ったプリン。豪炎寺と夕香ちゃんに食べて欲しくて頑張って作った。お菓子作り得意で良かった…。
『これ、作ったの。良かったら夕香ちゃんと一緒に食べて』
「ああ、ありがとう。お前、意外と家庭的なんだな」
『それも良く言われるんだよね。あたし、元々勉強とかぜんっぜん出来なかった。その代わり料理とか裁縫とか得意だったんだ。でも、ある時成績が落ちるところまで落ちちゃって、星羅と瑠璃に猛特訓されたって訳。それで今の学力あるだけなの。だから本当はこういう家事の方が得意なんだ』
「なるほどな。お前らしい」
『ありがと。それじゃあ夕香ちゃんに宜しくね』
「ああ。また明日な」
『バイバイ』
こんな風に送ってもらえるのが本当はとっても嬉しい。さり気無く言ってくるのも好き。明日は少し早く抜けてきて豪炎寺のサッカーを見に行こうかな。
ーー翌日
『先輩、今日は早めに抜けます。他の部活も見に行ってみたいので…』
「全然良いよ!部活動編成まだだし。木曜日までしか見学できないからね。思う存分見て回るといいよ」
『はい!』
今日は先輩のライブだけ見て、抜ける事にした。星羅の両親が亡くなったって聞いて、盛り上がれる自信がなかった。部室から出ようと思ったその時。
「朝日奈さん、だよね」
『う、うん。そうだけど』
「正式に軽音部に入ったら、一緒にバンドを組んでほしい」
『え…?』
「俺はベース担当の桜庭 氷。君のその声を聞いて一緒に組みたいと思った」
「俺も、良いかな」
『だ、誰?』
「俺はギターの桜庭 炎。氷の双子の兄さ。俺も君とバンドを組みたい」
『私はまだ、歌う事しか出来ないし、バンドも経験者じゃない。君達経験者でしょ?本当に私で良いの?』
「ああ」
「それにバンドの事ならこれから教えるし」
『わかった。私は君達と組む。でも今日は見たい所があるんだ。それじゃっ』
部室を出て荷物を取った。あの二人と組むんだ。ギターとベースは集まった。でも三人だけじゃ辛いはずだ。もう少し集めないと。教室に向かいながら考える。できればドラムだけでもリズム隊が欲しい。