第5章 Light! 〈朝日奈 乃愛〉
取り敢えず、今は豪炎寺のサッカーを窓から見てたいな。今日は前見た時と違って魔神が出てきて、熱風を纏ってシュートを放つ。凄いなぁ。
「爆熱ストーム!」
凄いなぁ。と思っていたらキーパーの人がパンチングで弾き返した。星羅は学校には来ていなかった。凄くショックだったと思う。いきなり親が亡くなったなんて告げられたら…誰だって。
「朝日奈。やっぱりここにいたか」
『あ、豪炎寺』
時計を見ると五時半になっている。もうこんな時間だったんだ。考え事ってあっという間に時間が過ぎてっちゃうな。
「帰るか」
『うん!』
「今日はどうだったんだ」
『今日はライブだけ見てきたの』
「何してたんだ?」
『豪炎寺のサッカー見てた』
「はぁ…」
『あと、バンドメンバーが二人集まった!』
「誰なんだ?」
『桜庭兄弟っていうか双子の氷君と炎君が、ベースとギターをやってくれるらしいの』
「良かったな」
わざと明るく振舞った。ちょっと不機嫌そうだけど、何かあったのかな。それに、視線が鋭い。怖い。
『私は…。あ、っと、な、何にもない!そ、それじゃ!』
逃げようとする。なんだか気まずい雰囲気から逃げたくて、ついつい言ってしまう。駆け出そうとしたその時、
「待て」
腕を掴まれる。逃げようとするのに、逃げられない。閉じ込められたような気さえもする。
『ほ、ほんと何にも無いし、用事思い出しただけだから!』
「お前、わざとそんな風に振舞ってるだろ」
ば、バレてた…。そうだよね。無理に明るく振舞おうってったって、所々ボロは出る。
『星羅のおじさんとおばさんが亡くなるなんて…考えた事なかった』
「…」
『本当は、ぐちゃぐちゃしてるんだ。よく分からなくて、何をどうしたら良いのか…。こんな事初めてで…』
「俺も…そうだった…」
『豪炎寺も…?』
「母さんが亡くなってから、俺はどうしたら良いか分からなくなったんだ」
『そりゃあね。大切な人が亡くなったら…誰だって』
「ああ。どうして母さんが…俺だってそう思った」
『星羅…』
「あまり、深く考えすぎるな」
分かってる。分かってるの。でも…星羅の事考えたら、辛いよ。一番大切な人がいきなり消えてしまう。そんな恐怖は…。
『取り敢えず、送ってくれてありがと』
「ああ」
『日曜日、楽しみにしてるね。夕香ちゃんにも宜しく』
「ああ」
振り返らず家に入った。