第40章 FFHI Ⅴ〈綾織 星羅〉
午後の練習は、何だかあっという間に時間が過ぎていった。束縛を考えずに仕事ができるのが嬉しかった。自分でも本当の笑顔だったと思う。
「今日の練習はここまで」
本当にあっという間だ。空はもう既に暗くなっていて、結構寒い。選手達は凄く暑そうだけど。
「星羅」
『なあに?』
「手伝う」
『ありがとう、有人君!』
「元気を出せたみたいだな」
『うん、飛鷹君が教えてくれたの。一歩引いて考えてみると良いって』
「何か、悩んでいたのか」
『うん、ちょっとね。でも今はスッキリしてる』
「そうか」
選手を笑顔にしたいなら、先ずは自分が笑顔にならなくちゃいけない。確かに辛い事だって今迄沢山あったけど、乗り越えてきた。これからもきっと大丈夫。
『私、マネージャーの仕事あるの。ここまで運んでくれてありがとう。また後でね!』
「ああ」
手を振って急いで食堂へ向かった。真っ白な息の間を掻き分けて走り抜けた。何だか、心地良い。前の自分を振り切れたみたいで。
「星羅ちゃん、盛り付けお願い〜!まだ終わんなくって…!」
『分かった!』
テキパキと盛り付けていく。選手達が来るまであと少し。大丈夫、終わりそう。
「星羅ちゃん、終わりそう…!それ終わったらスープ担当お願いして良い?」
『勿論』
「お願い!」
盛り付けも終わって菜箸からお玉に持ち替えた。
『お疲れ様でした。明日も頑張って下さいね』
「おう!」
訳わかんない事で悩み過ぎて、ちょうど頭がパンクしそうだった。でも、一歩引いてみなきゃ分かんない事だってある。でも、思うのだ。「この問題」は「答えがない」事が答えなんだ。だって私一人の力じゃ如何頑張ったって無理だ。それだけは言える。そして、決めた。FFHIの間はこの事は考えない。
「そっちも終わった?私達もご飯食べよっか」
『うん』
迷わず有人君の正面に座る。こうして、君の顔を近くで見ている事が何よりの幸せで。だったら、有限、無限関係無く大切にしていきたい。
『お疲れ様、有人君』
「そっちもな」
『今日も中々ハードだったけど…でも明後日にはもう一回戦を控えてるんだもんね』
「そうだな」
『私、頑張って応援するから。有人君も、頑張って』
「勿論だ。お前に勝利以外は持ち帰らない」
今の台詞、凄くカッコいいんですけど。有人君だから効果を発揮するんじゃないかなって思う。