第39章 FFHI Ⅳ〈天晶 瑠璃〉
それから色々準備や片付けもして、午後の練習に入る。
「瑠璃。スコア!」
『はいっ!』
「さんきゅ」
午後は試合形式での練習になった。無意識にヒロト君を目で追ってしまっているのに気が付いた。気が付く度に慌ててしまう。
「瑠璃ちゃん。晩御飯作りに行こっか」
『うん』
宿舎に戻って夕食作りを始める。育ち盛りだから、やっぱり沢山食べるみたい。その分食材も大量である。
「何とか終わったね。瑠璃ちゃん」
『うん。監督ってもう抽選に行ったのかな』
「うん。もうそろそろ行ったと思うけど…。最初はどの国と闘うんだろう…?」
『う〜ん、アジアも激戦区だし…何処と当たっても全力で行かないと、こっちがやられちゃうね』
「そりゃそうだよ。皆、全力で勝利を渇望してる。それ程…世界中の皆が欲しい物なの。「勝利」っていうのは」
流石、かるたで全国優勝しただけある。勝利に拘りを持ってるんだ。
「腹減った〜」
皆ぞろぞろと食堂に入ってきた。練習初日なだけあってかなり疲れているだろう。
『皆、沢山食べてね〜』
「瑠璃」
『どうしたの?ヒロト君』
「真ん中のテーブルの一番奥、空けておくから」
『うん』
つまりは、一緒に食べようって事だろうな。さり気なく一緒に食べようと誘ってくれる事がちょっと嬉しい。
「待ってる」
耳元で囁いてくるから、杓文字落としそうになっちゃった。
「俺も、誰かが座らないように見張っとくからさ。行ってやってよ」
『緑川君まで』
「ヒロトも充電したいだろうから」
『あはは〜』
「ほら、もう座って準備万端なのに絶対に箸に手をつけないから」
『装い終わったらすぐ行く』
「ああ、宜しく」
ご飯を装う手を速めて何とか皆の分を装い終わった。よし、ヒロト君が拗ねちゃう前に早く行こう。
『ヒロト君。お待たせ』
「瑠璃もお疲れ」
『うん。後でヒロト君のお部屋に行くね。マッサージしてあげる』
「瑠璃、マッサージ出来るんだ」
『藍がバドミントンやってるから。偶にやってあげるの』
「へぇあの子が…」
『藍はしっかりしてる。きっと私よりもちゃんとしてて、正確なの。あまりに正確を求めようとして壊れちゃわないか心配なんだけど』
「その分瑠璃はいつもふんわりしてるからね」
『だって、あんまりきちんとしてるの好きじゃないし…』
「知ってるよ」
自由に生きたい。いつだって私はそう思ってる。