第39章 FFHI Ⅳ〈天晶 瑠璃〉
「偽善っていうのは、外面で良いと思われる行為をしても、それが自らの本心や良心に基づいて行動している訳では無い事を指すの。でも瑠璃ちゃんは違うって分かるよね?だって、瑠璃ちゃんの思っている事は自らの本心や良心そのままでしょう?」
その通りだ。じゃなかったらこんなに追い詰められてない。
『…』
「基山君はきっと瑠璃ちゃんに応えてくれる。だって、何より瑠璃ちゃんのこと大切にしてるもん」
『ありがとう…星羅ちゃん』
私が…ヒロト君の彼女で良いの?本当に…私?駄目…今は料理にしゅうちゅうしないと。焦がさない様にしないと!
「瑠璃ちゃん…あんまり、思い詰めないで…」
分かってる。頭で、考えない様にしようって思ってるのにふとした瞬間に引き出しから飛び出してしまう。
『出来た…!』
「私も終わったから…後は盛り付けだけだね」
『うん…!』
もう少しでお昼になる。ちゃんと間に合いそうで良かった。夕食も私達の担当だから、なるべく考えない様にしよう…。
「おっ…良い匂いがするぜ!」
「この匂い…親子丼か?」
正解です…!誰の声だかよく分からないけど、よっぽど嗅覚が鋭いみたい。
「瑠璃…瑠璃…!」
『ひゃぁっ…!何だぁ…ヒロト君かぁ…』
「瑠璃、どうしたの?顔色悪いみたいだけど」
『え、あ、そう…?全然大丈夫…!』
「なら良いけど…早く食べないと、時間無くなるよ」
『あ、うん、そうだね』
ヒロト君はもう食べ終わってる筈なのに向かい側の席でニコニコと笑っている。
『どうしたの?ヒロト君』
「瑠璃を待ってようと思って」
『い、良いよ!私の事なんか気にしなくて…!』
「だってほら、此処にこういうの付いてるから」
ほっぺに付いていたらしいご飯粒を取って、ペロリと舐めた。不覚にもキュンとしてしまうのは、きっと好きだから。
「ヒロト。公衆の面前でイチャつくのはどうかと思うぞ」
「緑川。だって瑠璃が可愛いから」
『それ、理由になってないから…』
「行くぞヒロト。早く歯磨きして行かないと練習始まっちゃうだろ」
「瑠璃の事待ってるから」
『もう…私は大丈夫だから!練習遅れると怒られちゃうよ!』
「ほら、行くぞ」
「瑠璃ぃ〜!」
ズルズルと緑川君に引っ張られて洗面所へ連れて行かれるヒロト君。緑川君、いつも大変でしょうね…。まさか…毎日あんな調子なの…?…考えるのはやめよう。