第37章 FFHI III〈綾織 星羅〉
有人君の彼女は私だもん…。確かに気弱だし、はっきり話せない事も多いけど、それでも…有人君は私の事を鬱陶しく思う事なく前に進むという道を示してくれた。それに、有人君を想う気持ちは誰にも負けてない。
「どうかしたか」
『う、ううん!何にも無い!』
こんな事恥ずかしくて有人君に言えないよ!嫉妬した、だなんて。
「嫉妬したか」
若干口角を上げながら聞いてくる所を見ると面白がってるんだろうな、って思う。だって、恥ずかしいよ。別に恋敵がいるわけでも無いのに、変に対抗しちゃう。
『そうだよ…って言ったら、呆れちゃう…?』
「いや、嬉しい」
そのままちゅっちゅと啄む様に口付けてきて、何だかふわふわした気分になる。
『あ、ちょ、有人君…ここ外だから…』
「なら続きは家でだな」
『だ、駄目だよ!準備あるんだから!』
「明日は休みだからな。今日くらいハメを外しても父さんも何も言わないだろう」
『そ、そう言う事じゃなくて…』
ハメ外すのは良いけど、今日は試合あったから早く休んだ方が良いと思うんだけど…。
「嫌か?」
そんな風に聞かれたら嫌って言える訳無いよ…!知ってる癖に。
『嫌じゃ…ない…けど…』
「なら、また後で部屋に行く」
『う、うん…』
それってつまり…そういう事するって事で良いんだよね…?クリスマスは自分から吹っ掛けたけど、今度は有人君から…。何だか、初めての展開だから緊張しちゃうよ。
「星羅。FFHIが終わったらまた伝えたい事がある」
『うん。待ってるね』
きっと大事な事だ。何が伝えられようと覚悟はしておけという事なのだろう。大丈夫、悲しい事が伝えられようが、嬉しい事が伝えられようが、私は全てを受け入れる。君と付き合った時からずっとそのつもりでいたのだから。
「お前にはいつも待って貰ってばかりだな」
『私は…そのつもりで君の隣にいる。全てを受け入れるよ。何があろうと』
「星羅…」
『でも、私は出来る限り君の近くにいたい。近くにいて、君を支えたい』
それが私の仕事だと思ってる。それが、私の一番やりがいのある事で、君の笑顔が私の何よりの力。
『大層な事言ってるけど、要約するとね。有人君が大好きだよって話』
「それは簡単にしすぎだ」
『えへへ…』
実際そうだ。こんなに想いが強くなくちゃ何もやる気にならない。でも君には私をそうさせてくれる何かがある。