第37章 FFHI III〈綾織 星羅〉
「帰ったら準備の再確認だな」
『うん。一応必要な物は持ったけど、もしかしたら入れ忘れとかあるかもしれないし…』
「ちゃんとネグリジェ二つは持ったか?」
『だ、大丈夫だよ!子供じゃ無いんだから!』
「そうだな」
もう…。でも、ネグリジェって言われるとちょっと色っぽい感じがしちゃうのは、私だけかな…?
「星羅も成長したな」
『え…?』
「いや、さっき説明している姿を見て、四月ではあんなに怯えていたのに、今では人前でしっかり話せる様になったからな」
『結構緊張したんだよ。でも…有人君が見ていてくれるならって頑張れた。ありがとう、有人君』
「俺は何もしていない。全部お前の力だ」
『ううん。有人君が居てこその私だから。そうだ、まだ伝えて無かった』
そう、一番に言いたかった言葉。本当はあの時に言いたかったんだけど…。
『有人君。選抜入り、おめでとう。これからも一番近くで応援するね』
「ありがとう、星羅」
ゴーグルをかけていてもちゃんと伝わってるよ。君の笑顔は本物だから。
『まずはアジア予選を勝ち抜こうね!その為に沢山サポートするから!』
「そうだな。助かる」
入学当初は同じ位だった身長も今では見上げないと顔が見れない。
『有人君も、大きくなったね』
「ここ数ヶ月で身長が凄く伸びたからな」
『それじゃあ…』
精一杯背伸びをして、有人君にキスをした。正確に言うと、背伸び+ジャンプだけど…。
「あまり可愛い事をするな」
『だって、伝えたかったから』
「なら、俺はこうだな」
覗き込む様にキスをしてくる。柔らかい感覚が唇を包んで、あったかい気持ちになる。
『良いなぁ。有人君の方が楽に出来て』
「それなりに腰に来るけどな」
『現役バリバリの人がそんなおじいちゃんみたいな事言っちゃダメだよ…!』
「そうだな」
最近、有人君は身長が伸びたと同時に、髪型も少し変わった。前はドレッドヘアを全て一つに纏めていたけど、今は下半分を解いて上だけのハーフアップにしている。そのせいで最近急にモテる様になった。
「どうかしたか?」
『ううん。その髪型にしたらカッコよくなったなぁって』
「そうだな。お前がやっていたみたいに俺もやりたくなってな」
『沢山告白されてるでしょ?よく聞くもん。鬼道君かっこいいねーって』
中には告白しちゃおっかなって言ってる人もいた。でも、渡す気はない。