第36章 FFHI II〈朝日奈 乃愛〉
「お前の気持ち、受け取った」
『うん。ほら、もうそろそろ集合の時間じゃない?行ってきなよ!』
くるりと後ろを向かせて背中を押した。もう一発勇気を両手で修也に分けてあげた。彼女がこれだけ応援してるんだ。これで代表入りしなかったら怒るかんね!
『いってらっしゃい!』
修也を送り出してドリンクの準備をした。この試合は…気持ちと技術が釣り合ってる者が選ばれる試合だ。
「これより、イナズマジャパンの代表選考試合を開始する!」
黄金世代が高校生になったから気になっているのだろう。メディアも沢山集まってきてる。
『皆…頑張れ…』
試合のホイッスルがなったと同時に、グラウンドが凄い気迫で包まれた。これ以上の気持ちが集まった場所…FFHの全国大会以来だ。
「試合開始だぁー!キックオフと同時に佐久間が駆け上がったー!」
いつの間に解説が…。いや、そんな事は気にしちゃいられない。あ、綱海君がボールを取った。そのまま緑川君にボールを繋ぎ、基山君にボールが渡った。本当に、白熱した試合…。そのまま、相手のGKを破って一点を決めた。
『よし…』
これで、瑠璃も一安心したんじゃないかな。修也、此処が一番の頑張り時。踏ん張れ…!
「おーっと!此処で遂に豪炎寺に渡ったー!」
でも、完全に修也を警戒している。このままシュートに持って行くのはちょっと危険だ。
「染岡!」
「おうよ!」
染岡君にボールが渡った。やっぱり、それが一番の方法だよね…。ん?
「ドラゴンスレイヤー!」
ゴールの方向に行ったと思いきや、前でヒュウウウンと曲がって上に上がった。ありゃりゃりゃ…ミス…?いや、違う!
『修也…!』
「真爆熱スクリュー!」
そのままゴールに入って、得点になった。合わせ技だったんだ!成る程…凄い…。やっぱり、中学の時からずっと一緒にやってきた仲間なんだ。息もピッタリ…。
『やった…!』
「良かったね。乃愛ちゃん」
『椿姫…!』
「この調子で、明王君も良いとこ見せてくれると嬉しいなぁ…」
あ、今不動君ちょっとピクって動いた。今の会話、聞こえてたな…。
『大丈夫。これから不動君も活躍するから!』
「ほえ…」
ホイッスルが鳴ると、不動君もやる気マックスの様で、すぐさま相手からボールを奪い取って、仲間に指示を出す。普通に司令塔としてやれてる事にちょっと驚いた。