第36章 FFHI II〈朝日奈 乃愛〉
『修也は私の事好き?』
「当たり前だ」
『私だって、修也の事大好きだし、愛してる。その気持ちは絶対に変わらない。でも、その気持ちが伝わって無かった事が寂しいって思ったし、何より…悔しいよ…』
言ってる自分が感慨深くなって、涙が溢れてくる。こんな事で泣いていられないのに。
「乃愛…」
『修也が私の事大好きって思ってくれてる様に、私だって修也の事大好き!私の想いは…修也には伝わってないの…?』
「すまない…乃愛。焦って乃愛の気持ちが見えていなかった」
『うん…』
修也が目尻に溜まった涙をキスで吸い取った。
『修也…』
「アフロディに言われたばかりなのに、泣かせてしまったな」
『ううん。大丈夫。帰ろ、修也』
「ああ」
倉庫の鍵を閉めて、マンションに向かった。もう暗くなって河川敷には電灯が点いている。
『代表選考試合、頑張ってね。FWは競争率高いし…』
「勿論だ。お前と夕香にカッコ悪い所は見せられないからな」
『もう…。でも、いつでも応援してるから。だから…後悔は、しないで。絶対』
「ああ。約束する」
『うん』
大丈夫。修也はいつもサッカーに真正面からぶつかってる。何よりサッカーを大切にしている。気持ちも、技術も他の誰にも負けてない。誰よりもサッカーに熱い想いを持ってる修也なら、絶対大丈夫。
ーー代表選考試合当日
「いよいよだね。乃愛ちゃん」
『うん。椿姫は情報収集に専念してね』
「ありがとう。マネージャーが一人になっちゃうけど…」
『あ〜大丈夫大丈夫。中学の時よりマシだから!』
「?」
『あ、じゃあ私タオルとドリンク準備してくる!』
「うん!」
やっぱり当日だから皆ちょっとピリピリしてる。頑張ってね…修也!応援してるよ!
『皆、頑張ってね!』
「乃愛」
『あ、アフロディ!頑張ってね!』
「勿論だよ」
「お前達…仲良いんだな!」
『綱海君。仲良いも何も、同じクラスだし、ね?』
「ああ、そうだよ」
「何だ、そういう事か!」
『綱海君も頑張って。一杯練習したんでしょ?』
「おうよ!ありがとな!」
いよいよ始まるんだ…。運命を分かつ試合が…。
「乃愛」
『修也。頑張ってね』
「ああ。お前には一番近くで見ていて欲しい」
『勿論。見てるよ。ちゃんと、ずっと見てるから』
「ありがとう、乃愛」
『うん』
勇気を分け与える意味でキスをした。君が一番輝けるように。