第33章 Ring!〈朝日奈 乃愛〉
『何か…こうして話してると夫婦みたいだよね』
「…なるか。夫婦に」
『…へ⁉︎』
「俺はお前を手放すつもりなんて毛頭無い」
『あ、いや…その…』
そんな直球に来られると照れちゃうよ。勿論、君のその言葉を受け入れるよ。だって、どうしたって君を嫌いになんて…忘れる事なんて出来ないよ。
「…早すぎたな」
『ううん。そんな事無い。私、修也の奥さんになるから。大人になったら、もうちょっとマシなプロポーズしてよ?』
照れ隠し位、許してね。でも、サラって言われても女の子の夢は叶えたい。もう少しムードが欲しかったかな。
ーー翌日
「お姉ちゃん!お弁当持った?」
『うん。あと、飲み物も持ったから大丈夫。他に忘れ物無い?』
「うん!」
「大丈夫だ」
「…」
お父さん…ワクワクしてるの結構バレバレなんだけど…。三人、これを機会に仲良くしてくれれば…。
「着いた!」
『お姉ちゃん、荷物置いてくるね。修也、夕香ちゃん、サッカー、楽しんでね』
「ああ」
荷物を置いて、お父さんが座っているベンチの隣に座った。
「お前は行かないのか?」
『貴方に、お話したい事があったので』
「何だ」
『私は…貴方の事、怖い様には思えないのです』
「…お前は妻に良く似ている。優しく笑い掛ける所や、こんな俺でも何の躊躇もなく手を握る」
『当たり前です。誰かが苦しんでいるのなら、私はその支えになりたい』
「…!」
『貴方はまだ苦しんでいる。修也と、夕香ちゃんの事で』
「きっと俺は修也に嫌われている」
『そんな事無いですよ。修也は待ってます。貴方の言葉を』
「…しかし、分からない。彼奴に、どう伝えれば良いのか…」
『簡単です。そのままストレートの気持ちを修也は待ってます。遠回りで伝えても意味なんてありません。相手に伝わらなければ、言葉など要らないのですから』
「ストレート…」
きっと、ストレートの言葉じゃなきゃ、修也には伝わらない。私は、きっとこの二人が和解出来ると信じてる。
『私の家族は、一度壊れてしまいました』
「壊れた…?」
『価値観の違いから、対立しました。それから今年、悪かったとメールが来ました。それでも、両親と私の価値観は未だ違う。私は貴方達家族に、こんな結末を辿って欲しくない!』
「…!」
『だから、いってあげて下さい。きっと…待ってますから。修也も、夕香ちゃんも…』