第33章 Ring!〈朝日奈 乃愛〉
『ごめん、何か変な雰囲気にしちゃった』
「いや」
『私、ちょっと部屋に居るね』
「ああ」
部屋に戻っても、結局やる事なんて無くて。考えているのは両親の事だけ。結局、改心したと伝えられたメールにも分かった一言だけ。どうしても、許せなかった。大事な…絆をゴミみたいに扱った事にどうしても苛立ちを抑えられなかった。
『私…どうしたら…』
本当に…良いの?切れば…きっと二度と戻れなくなる。私が拒絶し続けたら、このまま分かり合えずに終わってしまう。それでも…。
「乃愛」
『修也…』
「悩んでいるのか?」
『あはは…大丈夫大丈夫…』
「じゃないだろ。無理して笑うのやめろ」
『うん…』
やっぱり、修也には隠せないか…。
『どうしたら良いのか悩んでたんだ。このまま、いていいのか。それとも分かり合うべきなのか』
「それはお前が決めるべきだ。どうしたいのか」
『…分からない。今まで、親との事深く考えた事なかった。だって、今までは敵だったから。それが、直接的な敵ではなくなったとは言え、味方とは言えない…』
「…」
『どうしたいのか、どうしたら良いのか…全部わからなくなっちゃった』
「落ち着け。簡単に解法に進もうとするな。そして、常識にも捉われるな。世間からどう見られようが、お前はお前だ。何も恐れる事はない。一度、腹を割って話してみたらどうだ」
『話し合って…』
「そうだ」
『うん、そうだよね…。話し合ってみないとわからない事ってあるもんね』
何も話さないままじゃ…駄目だ。修也にあれ程言っておいて自分でやらないなんて…駄目だ。冬休みには、アメリカに行ってみようか。
「そうだな」
『私、冬休みにアメリカに行って両親と話してくる』
「それが良い」
『修也、ありがとう。いつも、私に道を示してくれる。あるべき道に炎を灯してくれる。だから、ありがとう』
「お前が選んだだけだ」
『ううん。修也のお陰。ありがと』
感謝の意味を込めて頬にキスをした。こんなに近くに大切な人が居るのが嬉しくて、自然と笑みを零してしまう。
「俺だってお前の笑顔と歌に励まされて来た。お互い様だ」
『そっか…ありがと』
二人、支え合って此処まで来た。これからもきっと二人で進んでいくんだ。
『大好きだよ。修也。私、これかも修也の支えになりたい』
「俺も、お前の支えになる」
二人、ぱっちりと目線が合った。