第31章 Make! 〈天晶 瑠璃〉
『絶対に…許さない…!』
「まぁ…お前が俺に出来ることなど限られているがな」
許せない…!どうして…!此奴なんかにお父さんとお母さんが殺されなきゃならないの…!
『このっ…!』
「ふん」
押し返されて、鉄格子に頭をぶつけた。流石硬いだけあってとても痛い。
「俺はお前に恨みがあるんでな」
『何が…!』
反抗しようとしても力で敵う筈もなく、どんどん殴られる。必死に腕で庇う事しか出来なかった。
『うっ…』
「死ねぇ…!」
何なの…?私が、どうして貴方に恨まれなきゃいけないの…?
「明彦様。お時間で御座います」
「ちっ…仕方ないな」
「待って」。そう言おうとしたのに、声が出ない…。どうして、掠れた声しか出ないの?
『…ぁ…っ…!』
だめ…。頑張っても出ない…。皆に会いたいよ…。皆、無事なの…?誰か…助けて…。
「出ろ」
檻から出されて、お風呂にも入れさせてくれたけど、一向に声が出る気配は無かった。声帯が可笑しいのかと思ったけど、蒸気を吸っても駄目だった。どうすれば…。
ーー翌日
朝起きると、辛うじて声は出ている。水分を多く取って誤魔化そう。昨日の痣もヒロト君に心配されちゃうから、タイツで隠そう。幸い、顔は殴られなかったから、マスクはしなくても大丈夫そうだ。
「おはよう、瑠璃」
『おはよう、ヒロト君』
今迄の時間がどれ程幸せだったんだろうか。笑顔でおはようと言う事さえ、少し辛いと感じてしまう。
『う〜ん』
放課後になってもずっと考えていた。どうしたらこの状況を打開できるのか。私には…どうする事もできないの?
「どうしたの、瑠璃」
慌ててテストの結果で誤魔化した。これから、あまり話せなくなる前に、きちんとケリを付けておきたい事があった。それは、ヒロト君が抱えてるもの。蟠りを取ってあげたい。それが四月からの望みだった。
「実は、二月のFFHIに出られるか分からないんだ」
私が、FFHIのマネージャーに選ばれた事を話している内に大分話しやすくはなった筈。でも、ヒロト君の口から出てきたのは衝撃の言葉で。
ーーオーバーワークによる医師のドクターストップーー
私は、彼が大好きな事をさせてあげたい。笑顔で君がサッカーしているのを一番近くで見守りたい。オーバーワークは、私がサッカー部のマネージャーを辞めて、バレエに専念したからだ。