第31章 Make! 〈天晶 瑠璃〉
ヒロト君は私の所為じゃないと言うけれど、私がバレエをもう一度始めなければこんな事にはならなかったのに。趣味の範囲で納めておけば…。
『じゃあ、此処でお別れだね』
もう、どうすれば良いのか分からなくなった。ヒロト君なら来てくれると思ったけど、足に大分負荷が掛かってるから無理して欲しくない。私の心の支えである妹や弟達にも会えない。
『ぁ…っ…』
また、声が出ない…!何で…。これじゃ満足に話す事さえ出来ない。
「瑠璃!」
『…!』
乃愛ちゃん…。ごめんなさい。私、こうするしか出来なかった。でも、結局間違いで、皆の足を引っ張るだけ。もう、分からない。
「何で…!基山君の事はもう良いの…?」
違う…!良い訳無いよ…!寧ろ一番大切にしたい、だけど出来ない。
「何か言ってよ!瑠璃…!」
口を開きかけて、閉じた。今の私には乃愛ちゃんに伝えられない。無理に微笑みを作って、その場を後にする。
「瑠璃…」
ごめんなさい。今の私は、無力な人間。屋敷に帰ってきても直ぐ様鎖に繋がれ鉄格子の中。昨日と同じ様に殴られていく。もう、私に希望なんて無いんだ。
ーー翌日
「瑠璃ちゃん」
『…』
「何が、あったの…?」
今日も何も言えずに笑顔を作る。それしか、出来ないから。私には…それだけ。
「天晶さん。これ、貴方に渡してくれって頼まれたんだけど…」
笑顔を作って有難うの意を示す。わかってくれた様で、不快な気持ちにはならなかった様だ。
『…?』
貰った物はおばさんに渡した筈のペンダントだった。もしかして…ヒロト君、受け取ってくれたの?このペンダントはロケットペンダントになっていて、中に何かを入れる事が出来る。まぁそれでも小さな手紙位…。手紙…!
ーー瑠璃、事情はおばさんから聞いた。必ず助けに行くから、待っててくれーー
何で、君は足がどうなっても良いの…?二月にはFFHIも控えてるんだよ⁉︎私の事より、自分の足を大切にしてよ。私は君がもう一度サッカー出来なくなる方が辛いよ。
『ど…して…?』
無線音で零すけれど、誰が聞くわけでもなく無人の教室に響き渡った。無念さを痛感すると同時に手に冷たい物が落ちた。
『…ぁ』
泣いてるの…?駄目だよ、泣いたってどうにもなる筈が無いのに。私一人じゃ…何も出来ない。どうしたら、この状況を打開出来るんだろう…。