第31章 Make! 〈天晶 瑠璃〉
『ヒロト君。また明日』
「ああ」
ヒロト君と別れた直後だった。目の前に大きな男の人が立ちはだかった。
「お前が天晶 瑠璃だな」
『だとしたら…?』
「お前の兄妹達は全て捕らえた」
『…!』
皆…捕らえられた…?
『何がしたいの?』
「俺の、婚約者になれ」
『は?誰がそんな事…』
「弟や妹達がどうなっても構わないのか」
『最低…』
「瑠璃…!」
『おばさん…』
血相を変えたおばさんがこちらに向かってくる。駄目だ、おばさんまで巻き込むわけにはいかない…。
『おばさん…これ…ヒロト君って人が来たら渡して下さい!』
精一杯の力でおばさんにいつも持ち歩いているペンダントを投げた。ヒロト君なら、来てくれる。絶対、何があっても。
『逃げて!』
おばさんに必死に叫ぶ。意図を理解したのか、すぐに走っていった。これで良い、これで良いの。
「ほう」
『私を…連れて行って』
もう、後戻りは出来ない。妹と弟達を守れるなら。
「乗れ」
車に乗って、鬼道君の家の様な屋敷に連れてこられた。妹や弟達の所にはいつ案内されるのだろうか。早く、安心したい。安心させてあげたい。
『妹と弟達はどこ』
「お前に合わせてやる筋合いはない」
そんな…!じゃあ、何の為に此処へ…?嫌だ…!琥珀、紫、翡翠、瑪瑙、灰簾、藍…!
『約束が違う…!』
「お前と彼奴らを会わせてやると言った覚えはない」
『最低…!』
何かを言ってやろうと思った瞬間に足首を鎖で繋がれて、後ろから羽交い締めにされる。
『何…するの…!』
「こっちに来い」
何があると思いきや、一つの大きな部屋に連れていかれた。家具も取り揃えられていて、貴族が住みそうな部屋なのに、一つだけ物騒なものが置いてあった。
「入れ」
部屋のど真ん中に小さな檻がある。恐らくそれに入れと言っているのだろう。大人しく従うしか道はない。
「此処で待て」
待ても何も閉じ込められているから待つしか出来ない。暫くすると彼奴が出てきた。
「自己紹介をしていなかったな。俺の名前は東雲 明彦」
『別に聞いてない』
「そうか」
檻を開けて中に入ってきた。警戒がマックスになる。近付かないで…。
「実はな。お前の両親を殺したのは俺だ」
『…!』
「その飛行機の会社が俺の会社でな」
意図的な飛行機事故…。お父さんとお母さんが亡くなったのは…此奴の所為!