第30章 Lead！　〈綾織 星羅〉

「星羅から離れろ！」
「ちっ…面倒臭ぇな」
『私をどうするつもりなの…』
「元は、鬼道 有人を絶望させる為だ。お前を煮るなり焼くなりすれば此奴も絶望するだろ」
『なら、なぜ有人君に直接行かないのですか』
「それは…」

言葉に詰まるという事は自信がないという証拠だ。全く、何でそんな状態で仕掛けようと思ったのか…。

『吃るという事は貴方に自信が無いという証拠なのではありませんか？貴方は一体何がしたいんですか？』
「俺の方が此奴より前にお前の事が好きだったんだ！だから横から掠め取ったお前を許さない！」
『貴方は一度でも私とコミュニケーションを取りましたか？なぜ積極的に話しかけてこないんですか？』
「そ、それは…」
『少なくとも有人君は私に話しかけてきてくれました。貴方は、何か実行に移そうとしたのですか？』
「い、いや…それは…くそっ…！」

決まりが悪くなったのか、逃げていった。というか、私何であんなに喋れたんだろう…。

「星羅、怪我は無いか」
『うん。大丈夫。ごめんね、疲れてるのに…』
「お前、俺に遠慮しているのか？」
『疲れてたから、そっとしておいた方が良いと思って…』
「お前は、俺の命より大事な存在なんだ。お前に何かあったら俺が如何にかなってしまいそうな位心配なんだ」
『有人君…』
「少しは…俺の事を頼ってくれないか…？」

悲しそうな顔をしている。私、こんな顔、貴方にさせたく無い…！嫌だ。どうして。私、貴方に心配かけない様にって思ったのに…それを頼り無いと受け止められていたんだ。私…どうしてこんなに不器用なんだろう。

『ごめんなさい…私、不器用で…！』
「お前が無事ならそれで良いんだ…」
『私…駄目だね。君にそんな顔させたく無いのに…』

知らず知らずの内に涙が溢れてくる。自分の駄目さを思い知る。こんなにも、自分は不器用で…頼り無い。

「泣くな。俺だってお前の悲しむ顔は見たくない」
『こんな奥さんだけど…もう少し、付き合ってくれますか』
「少しだけじゃない。幾らでも」

月明かりが照らす中で影が重なる。愛してる。それしか出てこないのは、きっとそれ程までに君の存在が私の中を占拠してるから。

『大好き…大好きなの…』
「随分と…積極的だな」
『…寂しいから』

私は、有人君にしか甘えられない。君しか…居ないの。

「俺は、その寂しさを埋められるのか？」