第30章 Lead! 〈綾織 星羅〉
『良いよ』
家に帰って、ご飯を食べる。テストの結果も返ってきた。私は今回二位。乃愛ちゃんが頑張っていたから、一位は取られてしまった。また、頑張らなければ。
「星羅、それは何だ?」
『へ?』
「ブレザーに何か入っているぞ」
『あれ…本当だ…。後で読んでみるね』
本当は既に読んである。内容はまぁ、所謂脅迫状みたいなもので、有人君と別れろと書いてあった。何がしたいのかよく分からないんだけど、別れるも何も、もう婚約はしてある状態だし、他人の思い通りになる気はない。かと言って放っておく訳にはいかない。食事があったらまた有人君に相談してみよう。
『今日もとても美味しかったです。ありがとうございました』
「いえ。それではごゆっくり」
ご飯を食べた後、有人君の部屋を訪ねた。ノックをしてみるけど、返事はなかった。開けてみると、すやすやと寝ている有人君がいた。手には読み古したサッカー雑誌があった。
『お疲れ様。有人君』
そっとブランケットをかけようとして立ち上がると、服の裾を握られていた。
『有人君…?』
「行かないでくれ…母さん…」
『…!』
夢を…見てる…?お母さんが居なくなる…?起こした方が良い…?でも、夢を見ている時に無理に起こそうとすると脳にダメージがかかってしまう…!
「母さん…母さん…!」
『有人君…私、此処にいるよ。ずっと、君の側に…!』
「せ…いら…?」
『おはよう。有人君。魘されてたよ』
「すまない…夢を見ていたみたいだ」
有人君…疲れているな。今日はこのまま帰ろう。
『ごめん、私、用事思い出したの。部屋に戻るね』
「星羅、話があるんじゃ無いのか?」
『大丈夫。また明日ね』
今日の状態で話し合ってもきっと纏まらないと思うし、また明日にしよう。
『おやすみ。有人君』
「あ、ああ」
部屋に戻って、一度スマホを確認した。すると、見知らぬメールアドレスからメールが届いている。開けてみると、
ー今夜、お前を攫うー
怖くなって携帯をベッドに投げ捨てた。どうなってるの…?ゲームの広告でもない。戸締りもちゃんとしないと、と思って窓に近付いた時だった。
「かかったな」
まさか…戸締りする瞬間を狙ってたの…?
『有人君…!』
「無駄だ」
『んんっ…んんー!』
手で口を塞がれた。有人君…気付いて…!お願い!
「星羅…!」
『んんー!』