第29章 Fly!〈基山 ヒロト〉
『実は、二月のFFHIに出られるか分からないんだ』
「どうして…?」
『練習のしすぎが祟ったんだ。瑠璃がいる時迄は瑠璃が程良い所で声を掛けていてくれたけど、自分一人だとどうもコントロール出来なかったんだ』
「そんな…」
そんなに悔やむ必要は無い。瑠璃の所為では無い。自分でコントロール出来なかった自分が悪いだけだ。
『オーバーワークだとは皆に言われたよ』
「ごめん…ごめんね…。私…バレエなんかやってなければ…!」
『瑠璃、それは違う。俺の足の怪我は絶対に瑠璃の所為じゃ無い』
「お医者さんには何て…?」
『FFHIには出れるかもしれないけど、終わったらすぐに強制手術だそうなんだ。でもこの手術でこれから先サッカー出来るか出来ないかが決まる』
自分よりも絶望的な表情を浮かべる彼女は、今にも崩れ落ちてしまいそうだった。
「やだ…やだよ。本当は今すぐにでも手術を受けるべきなんでしょ?」
『嫌なんだ。せめて、FFHIで皆の役に立ちたい!俺は…このまま終わらせたく無い…!』
心からの叫びだった。どうしても、FFHIに出たかった。色んな国の代表との真剣勝負をもう一度してみたかった。
「…分かった。私、それまで君をサポートするよ。でも、これからは自主練は禁止だからね」
『…ああ』
案外すんなりと受け入れてくれた事に感謝しかない。
「私、そこまで覚悟がある人に簡単にサッカー辞めろだなんて言えないよ…!私だってずっとヒロト君に支えられてきた!でも…私は君の支えになる事が出来たかと聞かれれば素直にはいって言えない…」
どうして、そんな顔をするんだ。間違いなく瑠璃は俺の支えだった。何があっても笑顔で、俺の心配を第一にしてくれる。それこそ自分の身を投げ打ってでも。そんな素敵な人に惹かれない人がどこに居ようか。
『瑠璃は…これまでも、これからも、いつも俺の支えなんだ。瑠璃の笑顔が一番俺に元気をくれたし、何よりも大切な存在だと思ってる』
「うん…」
『だからそんな顔しないで欲しいんだ』
顔を上げるとボロボロと涙を零す彼女に驚いた。どうして、瑠璃が泣くんだ。俺が見たいのはそんな顔じゃない。そんな顔させたくて一緒に居るわけじゃ無いんだ。
「今年はディズニー、諦めようか」
『俺は』
「大丈夫じゃないよ!私は、君が大好きな事をこれから目一杯出来るようにサポートしたい」