第28章 Drive! 〈豪炎寺 修也〉£
「帝国学園ってサッカーめっちゃ強いってイメージあるけど、実はバレー部だってなかなかの強豪だったんだよ?部員20人も居たのを私一人で三年間切り盛りしてたんだから」
それは普通に凄くないか?三年間も20人を一人で…。雷門中でも3人は居てやっとだった筈だ。
『お前…実は凄かったんだな』
「まぁ、面倒見は良い方だし」
『と言うか、20人も男子いる中でマネージャーやってたのか?』
「うん、そう。最初先輩いるって聞いてたのに、その先輩急に部活辞めたらしくてさ。結局三年間私一人。結構影で言われてたよ。ビッチとか、男好きとか。でも、私バレー部に男の子いっぱい居たから入ったわけじゃ無いし、何より部活やってる真剣な姿を見て、少しでもサポート出来たらって思っただけ」
確かにそうだ。乃愛は男が居るからと言ってその部活に入るような人間じゃない。自分がやりたい事に忠実な人間だと思う。現に高校では自分が歌いたいからと言う理由で軽音楽部でボーカルを務めている。
「ツインテールも実際ぶりっ子の象徴みたいな感じで言われるでしょ?低めに結んでるならともかく、私なんて耳より上だし」
『確かに聞いた事はあるな』
「何でずっとツインテールしてるかって言うと、話せば長くなるんだ。聞いてくれる?」
『ああ』
確かに気になっていた。髪型を変えてからも、ツインテールだけは変えなかった。
「昔ね、まだおばあちゃんが生きてた時、毎日結んで貰ってたのがツインテールだったの。自分でも結べる様にって丁寧に結び方も教えてもらってさ。おばあちゃんの事大好きで中学生になっても毎日結んで貰ってたの。でも、私が中3の時に癌になっちゃった」
静かに語る瞳は何処か寂しそうだった。其れ程祖母の事が大好きだったんだろう。
「おばあちゃん亡くなる時、私しか居なかったの。お父さんもお母さんも日本に帰ってこなかった。だからおばあちゃんに何で怒らないのって聞いたの。そしたら、人にとって何が一番大切かは違うんだって言われた。でも流石に家族が死にそうになったら戻って来るだろって思うけどね」
確かに、未だ凄く仲の良い訳では無い父さんが死にそうになっても俺は急いで駆けつけると思う。
「おばあちゃん、亡くなりそうなときこう言ったんだ。おばあちゃんは乃愛ちゃんが大好きで今では一番大切なんだよ。また会えた時は上手になった二つ結び見せて頂戴ねって」