第28章 Drive! 〈豪炎寺 修也〉£
『前にお前がアメリカに行きそうになった時あっただろ』
「あ〜、あれね」
『あの日、何時まで経っても学校に来ないし、帰りに寄ってみても誰もいなくて本当に焦った』
あの日の絶望感は物凄かった。今まで普通に笑って過ごしていた日々が、なんの知らせも無く崩れ落ちてしまうのかと思って。
「元からあの日学校行くつもりなかったの。ああでも言わないと修也はドアの前から離れてくれないなって思って」
『あの後、天晶に聞いたらアメリカ行くって聞いて急いで学校飛び出したな』
次の日天晶に聞くと、如何にも聞いてないの?とでも言う反応をされたのが堪らなく悔しかった。知らせるのにも値しない存在なのかと思っていた。
〈あれ?聞いてないの?乃愛ちゃん、アメリカに行くんだよ。何でかは聞いてないけど、大手の事務所からオファーが来たとか言ってたような…。もしかしたらそれかもねぇ〜。今日のお昼の飛行機で行くんじゃ無かったかな?〉
「瑠璃も結構マイペースと言うか…まぁ、私が決めた事ならって事で送り出してくれたんじゃないかな」
『俺は本当に焦ったけどな』
「ごめんって。だって、最後に修也の顔見たら絶対日本から旅立ちたくないって思ってたもん」
本当に急いで向かって良かった。あの時天晶に聞いていなければ、間違いなく乃愛はアメリカに発ったまま帰ってこなかった。
「は〜すっきり。ね、上に座っていい?」
『ああ』
乃愛が湯船に浸かっている俺の上に座ってきた。一応念の為腰にタオルは巻いている。乃愛は勿論何も巻いていない。
「な〜んか不思議だね。こうやってさ、ただの高校で知り合った同級生なのに、両想いになっちゃうんだよ?」
『そうだな』
「もうそろそろでクラス解体だし、二月にはフットボールフロンティアハイスクールインターナショナルだっけ?」
『ああ、選抜に選ばれるように頑張らないとな』
「実はさ、それのマネージャーにならないかって響木監督って人から言われたんだ」
フットボールフロンティアハイスクールインターナショナル、略してFFHIが二月に開催される。日本全国の高校生のサッカー選手の中から先ずは22人選ばれる。中学の時とあまり仕様は変わらない。しかし、まさか乃愛がマネージャーに選ばれるとは思ってなかった。
「これでも中学の時は三年間ずっとバレー部のマネージャーだったんだから」
『成る程』