第28章 Drive! 〈豪炎寺 修也〉£
祖母との思い出でずっとツインテールをしているのなら頷ける。確かに、そんなエピソードがあるのなら俺でも変えないだろう。
「変えたく無かったんだ。だって一番大切に思ってくれてるのが何より嬉しかったし、その想いは行動で返したかったから」
円堂と一之瀬も言っていた。想いは行動で返すと。中学で聞いた時はあまりピンと来なかったが、実話を聞くとちゃんと理解する事ができた。
『思い出の髪型なんだな』
「そう。流石に社会人になったらあんまり出来ないから、今の内ちゃんと練習して、将来子供ができたらその子にも一杯ツインテール結んであげたい」
『夢があるのか』
「そ。出来ればその子供は君とが良いんだけど」
俺の膝の上に座っている状態で振り向いてきた笑顔は、やはり母さんに似ていた。
『そうだな。俺も、子供が出来たらその子はお前との子が良い』
「じゃあ、高校卒業してからもずっと一緒だね」
『ああ』
例え、何があろうとも乃愛だけは絶対離さないと決めた。そして、俺が守ると。もう、元婚約者が来た時の様な顔をして欲しく無い。俺は見るなら乃愛の笑顔を見ていたい。
『そういえば、FFHIのマネージャーの話は受けるのか?』
「勿論。何事も経験って言うしね。頑張るよ。それに瑠璃と星羅にも来てたらしいし」
『先輩方には?』
「来てないって。この事は言わない方が良さそう…」
確かに、FFHIの日本代表チームのマネージャーに選ばれたとなれば、内申書にも少なからず良い影響はもたらすだろう。
「響木監督って人が何で私達を選んだのか考える事が大切だと思うんだ。だから、私達はその期待に応えたい」
響木監督も何の考えも無しに選んだ訳ではないだろう。きっと何か理由があった筈だ。
「私達はマネージャーとして出来る事を頑張る。だから、修也達は自分達に出来る最高の努力をして欲しい。そして、カッコいい所見せてね」
『勿論だ』
雷門イレブンにとって努力は得意中の得意だ。努力は無駄じゃ無いとサッカーに無駄に熱い奴が教えてくれた。だから今俺はここに居る。
「あとは、迷った時は根を詰め過ぎずに、一番最初じゃ無くても良いから彼女を頼る事」
『多分だが、沢山頼るだろうな』
「あんまり構ってくれないと拗ねる可能性があるので一日一回でいいから話してくれると嬉しいな」
ふんわりと微笑む彼女にキスをして湯船から出た。