第26章 Lay! 〈朝日奈 乃愛〉
ーー数時間後
『んぅ…ん…』
「気が付いたか」
『あれ、修也…』
「まだ起き上がらなくていい。先ずは聞きたいことがある。何故こんなになるまで俺に何も言わなかったんだ」
『…これくらい、出来ないとって思って…』
「何の為に俺がいる」
凄く心配そうに見つめてくる瞳に嘘は吐けない。私、全部一人でやろうとして…結局駄目だったんだ。
『…ごめん』
「お前、39℃も熱があったんだぞ!」
『あはは…頑張りすぎたかも』
「明日は強制的に休みだからな」
『だ、大丈夫だよ』
「大丈夫って言った結果がこれだろ」
『うっ…』
痛い所を疲れた。それに、この時期は季節の変わり目だから、風邪も引きやすい。だからかもしれない。
「明日は俺も休むから」
『だ、駄目だよ!テスト近いんだし、ちゃんと授業出ないと…!』
「お前以外に一番大事なものなんてない」
『ばか…』
そんなバカ真面目に言われたらまた熱上がっちゃうでしょ…!
「お粥を作っておいた。食べられそうか」
『うん…少し』
「食べさせてやる」
えっ…貴重…!風邪引かないと分からないものもあるなぁ…。ふーふーして冷ましてもらうのがなんか好き。
「ほら」
ぱくっと口に含むと、やっぱり手馴れてる感ある。好きだなぁ…修也の味。
『美味しい…』
「なら良かった」
半分くらい食べた所でお腹がギブアップを迎えたので、薬を飲む事にした。
「これから当番制だな」
『でも修也の方が疲れてるでしょ?』
「疲れてるのは皆同じだ。お前だけに任せておくわけにはいかない」
『ありがと』
「今日はもう寝ろ」
『うん』
「後は俺に移せ」
何言ってんの。貴方に移したら元も子もないでしょうが。
『それじゃ駄目だよ』
駄目だって言ってるのに、キスしてくる。自分に移させる気満々で角度を変えてキスしてくるから、本当に寝かせる気あるのか心配になってきた。
『も、もうギブ!寝るから!』
「おやすみ、乃愛」
『おやすみ、修也』
耳元で囁かれる声に少し驚きながらも挨拶を返した。隣には修也が座ってくれているから安心だ。なんでなんだろう、好きな人がこんなに近くにいて安心するのは。
『修也、大好き』
一瞬驚いたように目を見開いていたが、すぐに笑顔に戻って布団をかけてくれる。その笑顔を瞼の裏に焼き付けたまま、静かに、ゆっくりと、瞼と意識を閉じていった。