第26章 Lay! 〈朝日奈 乃愛〉
ご飯の用意が出来て、四人で食卓を囲むけど、重苦しい雰囲気は変わらない。夕香ちゃんはそんな空気に耐えられないのか、いつもより若干ハイスピードで食べて、颯爽と部屋へ戻った。
『…』
どうすれば良いんだ、この雰囲気は。この二人にはちゃんと話し合ってみてほしい。一歩踏み出すのには勇気のいる事だけど…。
「修也、サッカーはどうなんだ」
「この前、全国大会で優勝しました」
「お前はスタメンで出たのか」
「はい」
「先輩は何も言わないんだな」
「…」
『何も言わなかった訳ではありませんよ。勝つ為に、自分より一年の方が有利ならそうするべきだと仰っていました』
「…なら、何故お前は何も言わないんだ」
しまった。私、言っちゃいけなかったのかもしれない。どうしよう…。
「どんな風に言っても分かってもらえないと思ったので」
完全に警戒心を抱いてしまっている。修也も心を開かないと…。お父さんが折角心を開こうとしてくれているのに。
「お前はあくまでも、俺を拒絶するんだな」
悲しそうに席を立つ勝也さんは、上着を羽織ってまた出て行ってしまった。このままじゃダメだ!何とかしたい…。
『修也。行かなきゃ駄目だよ』
「…」
『このままじゃ、私達と同じになっちゃう。この家族には私達と同じ道を行って欲しくない』
何かを思い出したかのように、立ち上がって出て行った。これで何とかなると良いんだけど…。
「お姉ちゃん。お兄ちゃん達、何かあったの?」
『大丈夫、きっとすぐに戻ってくるよ』
氷はいつか溶ける。溶けるためには何かきっかけが必要だ。それが炎だったり、勇気だったり、色んなものがある。変えようと思う心が大切なんだと思う。
『夕香ちゃんはお風呂に入ってて。お兄ちゃんはすぐに戻ってくるから』
「分かった…」
心配そうにお風呂に向かう夕香ちゃん。修也なら大丈夫、だよね。あんなに内に秘めた熱い物を持ってる君なら…きっと。すると玄関の扉が開く音がする。
『お帰り』
「父さんと、話してきたんだ」
『どうだったの?』
「分かってくれた。だから、俺も父さんを分かろうと思う」
『それが良いよ。…あ、そうだ。テスト終わったら四人で遊ぼう!そしたらもっと楽しいよ!』
「…そうだな」
『私から提案しておくからさ。修也も楽しみにしててね』
やっぱり分かり合うには一緒にサッカーやってみた方が良いと思う。