第26章 Lay! 〈朝日奈 乃愛〉
暫く見ていると、スヤスヤという可愛らしい寝息が聞こえる。夕香ちゃんの方を見ると眠ってしまった様だ。今の内に勉強していようか。
『夕香ちゃんが寝てる間に勉強するよ』
「乃愛、あまり無理はするな」
『心配してくれてありがとね。これくらいなら大丈夫だから』
勉強道具を持ってきて、修也の隣に座った。テストもある。部活もある。でも疎かにしちゃダメだ。全部…やらなきゃ。暫くペンを進めた所で修也が乗り出して来た。
「乃愛、ここ教えてくれないか」
『良いよ。ここは、場合分けをして、絶対値の括弧を外して考えるの。これを解くと、凄く変なグラフになる筈だから』
「ああ、分かった。助かる」
日頃の疲れのせいか、あんまり集中出来ない。折角隣に修也いるから、抱き着きたいんだけど、テスト期間だしやめたほうが良いよね。
「乃愛、ん」
『へ…?』
修也が椅子を少し引いて、腕を広げている。これって…まさかだよね。以心伝心とかそんな。
「抱き着きたいんだろ」
『何で分かったの…?』
「顔を見れば分かる」
『ええ…?そんな顔してた?』
「ああ」
バレてたのか…。以心伝心というより、私が分かりやすいだけじゃん…!恥ずかしっ!
『…いい?』
「ああ」
若干不安げに尋ねながら、抱き着いた。男の子の筋肉質な身体に若干驚きつつも、胸板に顔を埋めた。
『…好き』
そう一言呟いて、顔を上げると優しいキスが降ってくる。額に、目尻に、頬に、そして唇に。柔らかい感触が身体中を刺激した。
「俺も好きだ」
目を細めて嬉しそうに言う姿に、不覚にもキュンとしてしまう。間近で見ると本当にかっこいいなって思う。
『ねぇ、膝に乗って良い?』
「ああ」
膝に跨って、修也と向かい合わせに座った。必然的に見下ろす事になるので、いつもとの違和感を感じる。
『今は、私の方が背高い』
「見下ろされるのも悪くないな」
『…変態』
「お前限定のな」
『それは嬉しい』
下らない会話さえ楽しく感じる。こうやって二人で笑い合える事が一番幸せ。
「胸元、空いてる」
『あ、ほんとだ』
チャックを閉めようとすると、手を掴まれ、胸元に顔を埋められた。
『…っ』
鎖骨辺りに小さな痛みが走る。その辺りを見ると小さな赤い痕が出来ていた。
『こ、これって…』
「虫除けだ」
『ちょっと、体育の時見えちゃうよ!』
「狙った」
『バカ』