第25章 Halloween! 〈鬼道 有人〉£
〈side 鬼道 有人〉
いきなり携帯が鳴ったから見てみれば、朝日奈からのラインだった。
〈今星羅が大変な事になってるから行ってあげて!〉
一瞬疑ったが、取り敢えず大変な事になってるというのは見過ごせないので、急いで部屋に向かう。大変な事ってどういう事なんだ?とも思うがドアノブを握る。しかし、大変な事という割には部屋からは何も音が聞こえない。
『星羅…?』
ノックしてみるが返事はない。持っていたドアノブを左に捻って中に入った。中に入ると規則正しい寝息が聞こえる。別に大変な事になっている訳では無いような気もするが、取り敢えず星羅に近付いた。
『星羅…おい…』
いつもなら羽織っているカーディガンも脱ぎ捨ててあり、綺麗な絹の様な素肌が晒されている。しかし、何故だか顔が赤くなっており、少し酔っていたかの様にも見える。
『まさか…』
テーブルに乗っていた物を見て少し疑った。残っていたチョコレートを開けて食べてみると、予想が確信に変わった。星羅の食べた物はウィスキーボンボンだった。
『星羅…起きろ。こんな所で寝ていると風邪を引く』
「んうぅ…ゆ…と君?」
『ああ、ほら、ベッドに入れ。風邪を引くぞ』
「えへへ…ゆーと君だぁ…好きぃ…」
いきなり抱き付いて来たものだから動揺してしまう。風呂上がりのラベンダーの匂いが鼻を掠めた。しかも案の定酔っている。この少量で酔うという事は酒に弱いのだろう。
『これ食べたのか?』
「う〜ん…分かんなぁい…えへへ…」
自分の腹に頬擦りしながら笑っている彼女に悶えながらも、早く寝る様に言い聞かせる。舌ったらずの口調が余計に唆るが、今はそんな事考えている場合では無い。明日は休みだから良いものの、学校だったら本当に寝ないと危ない時間だ。
『ほら、寝ろ』
「…ゆーと君は、わらしと一緒に居らくないのぉ…?」
涙目になって訴えてくる彼女が可愛すぎてどうにかなってしまいそうなのを抑えて精一杯弁解する。
『そういう訳じゃ無い。早く寝ないと、明日の朝起きるのが辛くなるぞ』
「いいのぉ…明日休みだもん…どぉしれも…らめぇ?」
星羅のゴリ押しには本当に弱いと自分でも思う。海でもそうだった。だがここでは心を鬼にしなければならない…。此処で理性に負けては元も子もない。
『だ、駄目だ…』
「どぉしれも…?」
『くっ…だ、駄目だ』