第25章 Halloween! 〈鬼道 有人〉£
〈side 綾織 星羅〉
今日はハロウィン。乃愛ちゃん達に渡されたのは、結構多めのチョコレート。取り敢えずこれを食べてとしか言われていない。乃愛ちゃんに出来れば仮装してと言われたけど、仮装しようにも仮装できる物を持っていないから、取り敢えずパジャマで良しとする。
〈準備出来た?〉
〈出来たけど、本当にこれだけで良いの?〉
〈全然オッケー。心の準備が整ったら、チョコレート食べてね〉
このチョコレート、何なんだろう…。試しに一粒食べてみるけれど、中に何かの液体が入っている事がわかった位で、何の変哲も無いチョコレートの様に感じる。
『これ、本当に何かの効果があるのかなぁ…』
思わず口に出してしまうほど何もない、と思いきや少しずつ体があったかくなってくる。生姜でも入ってるのかな…。そんな感じはしないけど。
〈星羅〜生きてる〜?〉
〈うん、でも、本当にこのチョコレート何かあるの…?〉
〈大丈夫!〉
乃愛ちゃんが言う通り、もう一粒食べてみる。すると、もう一度液体が口の中に広がる。だんだんと頭がぼんやりとしてくる。
〈なんか、頭がぼやぼやする〉
〈大丈夫!もう一粒いってみ〉
袋の中にあるチョコレートをもう一個取り出して銀紙を開けた。三個目を口に含んだ辺りから目の前がグラグラしてくる。急に眠気も襲って来て、何だかふわふわした気分になってくる。
『熱い…』
何がなのかはわからない。上に羽織っていたカーディガンも脱ぎ捨ててネグリジェだけになる。何もしてないのに体がどんどん熱くなる。どうしよう…何だか有人君に会いたくなってきちゃった。
『んぅ…ゆーと君…』
駄目だ、変な声まで漏れて来ちゃう。チョコレート、もう一個食べた方が良いのかな。おもむろに袋からチョコレートを取り出してもう一個頬張る。ラインの通知音が鳴ってる様な気がするけど、眠いし熱いしで手が届かない。
『熱いよぉ…』
ポツリと呟いてみるけど誰もいない。だんだん眠気が勝ってくる。重くなる瞼を何とか開けようとするけど、どうしても重くなっていく。最後の一個だと思ってもう一度チョコレートを食べる。甘いチョコレートと何とも言えない液体が口の中を満たしていく。
『ふぅ…ふぅ…』
息が荒くなる。やっぱり、眠くなってくる。瞼の裏にいるのはやっぱりいつも有人君。赤い目がこちらを向いた時に意識が途切れた。