第3章 Burn! 〈朝日奈 乃愛〉
『やっぱワックスじゃん』
「うるさい」
『下ろした方がかっこいいと思うんだけどな…』
「別に良いだろ」
まぁでも、トレードマークっぽくて良いかも。後ろの人黒板見えなくなりそうだけど。
『そう、聞いてよ!今日ね、軽音部行ったんだけど、ぜひ入ってくれってオファーもらっちゃった』
「それだけ凄いって事だな」
『ありがと!でも、豪炎寺も凄かったよ!やっぱりあのシュート、豪炎寺だなって思った!』
「見てたのか?」
『うん!すっごいカッコ良かった!』
「そ、そうか…」
そう、すっごいカッコ良かった。サッカーの時は顔つきが違う。楽しいって事ともっと前に進みたいって顔してた。私が歌ってる時と同じ、楽しくて楽しくて仕方ないって。
『私ね、今日部室で歌ってきて、凄く楽しいって思った。もっと歌いたいって。豪炎寺も、サッカーやってる時の顔、私とおんなじ顔してるように思った』
「…!」
『だから、私達、似てると思う!大好きなものを追いかけてる!だから、一緒に頑張ろうよ!』
「ああ。そうだな」
『あ、あたしここ家ここなんだ。晩御飯までちょっとあるし、ゆっくりしていかない?』
「ああ」
ピピピッ
「悪い、鬼道からメールだ」
『どうしたの?』
「河川敷で練習しないかって」
『無理はしちゃダメだよ。あ、そうだ。ちょっと待ってて』
家に入って作り置きしていたパウンドケーキを冷蔵庫から取り出した。
『あ、これ、小腹が空いたら食べてよ。いらなかった捨てても良いからさ』
「捨てない。ちゃんと食べる」
『ありがと!良かったら今度感想聞かせてね!』
「ああ。また日曜日な」
『うん。楽しみに待ってるね!』
日曜日、凄く楽しみだ。星羅と一緒に行ってもいいけど、星羅が誘って来なかったって事は何か理由があるんだろうし、私も一人で行こうかな。
もう、私…豪炎寺にぞっこんじゃん…。あぁ…恥ずい。多分だけど…豪炎寺の事、好きになっちゃったよ…。
ーー日曜日
今日は豪炎寺の試合か…。白のロゴ入りTにデニムのタイトスカート。キャップを被って…これで大丈夫!これでも料理は得意な方だから、お弁当だって作ったし。あとは日焼け止めをこれでもかっていう程塗りたくる。タオルを持って、水分も一応ペットボトル二本買っておいたし大丈夫だと思う。いつもはツインテだけど、今日は低めの三つ編み。よし、行こう!