第3章 Burn! 〈朝日奈 乃愛〉
『あ、はい。元からそのつもりで…』
「あ、そうなの?それなら良かった。今日はこれで終わりだからさ、また月曜も来てよ」
『はい!』
部室を出て、自分の荷物を取る。今日は三人で一緒に帰る予定だったけど、体験入部があるからそれぞれバラバラに帰る事にした。今何時だったか確認しようと携帯を探したけど、ない…。教室に置いてきちゃったかな。時間もあるし、ゆっくり教室に行こうかな。廊下からは楽器の音が聞こえてくる。
『あ、あったあった…』
五時半か、結構時間経ってるな…。あ、ボール蹴る音が聞こえる。サッカー部かな。窓を開けて覗いてみた。開けてみた途端凄い光景で、豪炎寺が炎を纏ってゴールにシュートを決めていたのだ。
『凄い…何あれ…』
一目見ただけで常人には打てないシュートだっていうのは分かった。彼のクールな性格には似合わないけど、でも、何でだろう。彼自身の何かとぴったり当てはまるような。それに、普段は自分から話しかける事は無さそうなのに、ボールには積極的に向かう。全てボールで語っているみたい。
『かっこいい…』
何だろ…こんな、変な気持ち…知らない…。
「朝日奈」
『へっ⁉︎』
急いで後ろを振り返るとジャージ姿で汗を拭いている豪炎寺がいた。
『あ、豪炎寺か』
「どうした」
『教室にスマホ取りに来たの』
「そうか。体験入部も終わったし、送って行こう」
『え、良いよ。豪炎寺だって疲れてるじゃん』
「いや。これ位なら何時もより動いていない方だ」
『でも…』
「お前が嫌なら諦める」
『全然嫌じゃない!寧ろ一緒に帰りたいって思って…』
何言ってんの私!ちょっとまって、アフロディ並みに爆弾発言…。
「なら帰るか」
『う、うん!』
急いでリュックを背負って豪炎寺に着いて行く。何だろうこの気持ち。会って二日目なのに、話すだけでこんなに楽しいなんて、思ってなかった。
『ありがとーね。送ってくれるなんて』
「春は変な奴が多いらしいからな」
『あはは…。でも、それ言えば豪炎寺だってその髪型…』
「それとこれとは話が別だ」
『でも流石に社会に出たらそれはイタいよ?』
「まだ、高校生だからな」
『成人式でも同じことやってたら笑ってあげる』
大人になってもこの髪型だったら絶対笑うんだけど。でも、見つけやすそう。しかも絶対ワックスじゃんこれ。
「お、おい、触るな」