第22章 Stick! 〈天晶 瑠璃〉
ヒロト君を守るには、この方法しか無かった。疲れている君をこれ以上疲れさせるわけにはいかない。
〈ヒロト君〉
〈別れようか〉
二つ打ってヒロト君宛にラインを送信した。これで、良かったの。楽しかった…ありがとう…。そのまま寝てしまって、もう一度起きた時には携帯が振動していた。ヒロト君だ。ごめん、と心の中で呟きながら拒否のボタンを押した。履歴を見ると基山ヒロトの文字がずっと続いている。
「瑠璃ー!ご飯よー!」
おばさんの声が聞こえた。もう切り替えるんだ。終わったの。夕食を食べてから、お風呂に入って布団に入った。なんだか眠れない。
『最悪…』
なんだか寝付けなくて下に降りた。水を飲んで落ち着こうとするけど、なかなか寝付けない。
〈もう一度話したいんだけど〉
〈ごめん、俺のせいだ〉
違うよ。ヒロト君のせいじゃないよ。私が悪かったの。だから、もう…終わりにしよう…。最後の言葉がこれってかなりキツイだろうけど、これしか方法が無かった。
〈さよなら〉
もう、何も見たくなかった。初めて追い詰められた状況というのを身を以て感じた。星羅ちゃんもこんな感じだったんだろうか。
ーー翌日
弟達を見送る前にもう家を出た。いつも通りの時間に来たら、きっとヒロト君が居そうだから。
『お姉ちゃん用事あるから先に出るね』
「はーい」
取り敢えず早く行こう、ヒロト君に来られたら何て言えば良いのか分からない。
「お、来た来た」
『何の用?』
「彼氏なんだから別に話しかけても可笑しい所無いでしょ?」
『私は貴方に話し掛けられるのが迷惑』
「釣れないねぇ」
最悪、こんな人と付き合わなきゃいけないなんて。それから、一週間経っても、ヒロト君は話し掛けてくる事は無かったし、あの人も秘密をバラさなかった。そんなある日、事件が起こった。放課後残って勉強していた時だった。
「瑠璃ちゃん!」
『どうしたの?星羅ちゃん』
「ヒロト君が…!倒れて病院に運ばれて…!」
『え…?』
「瑠璃チャン、今の彼氏は俺だよね?」
「瑠璃ちゃん…!」
どうしたら良い?どうしたら良いの…?私が行ったら、ヒロト君は迷惑がるんじゃ…!
『私は、行けないよ…』
「どうして!」
『だって…』
「瑠璃ちゃんは、ヒロト君の事好き?」
『それは…』
「好きだよね。だって心配でしょうがないって顔してるよ」