第22章 Stick! 〈天晶 瑠璃〉
〈少なくとも部活では何も無かったよ〉
〈そっか、ありがとう〉
何か、あったんだろうか。本人は多分素直に話してと言っても話してくれないと思う。私に心配かけたくないって思ってるから。
ーー翌日
何時もの時間通りに迎えに来てくれるヒロト君はやっぱり少し疲れていた。思い切って話してみようか。
『おはようヒロト君。なんか、疲れてる?』
「そう?俺は大丈夫だよ」
『嘘、ちゃんと話して?』
「寝不足なだけなんだ。本当、大丈夫だから」
やっぱり、話してくれないんだ。絶対寝不足じゃない。隈があるわけじゃない。何処かげっそりしているような…。
『そっか…あまり無理しないでね』
全国大会も終わったし、近くにテストがあるわけじゃない。何かイベントもあるわけじゃないし…。学校に着いても、やっぱり疲れている。何時も授業で寝る事がないヒロト君が寝てるのバレて注意されてたし。放課後になって掃除から戻って来た時に驚くべき事を聞いてしまった。
「ヒロト、珍しいな。お前が寝るなんて」
「そうかな」
「彼女となんかあったのか?」
「いや、違うんだ」
「ヒロトくーん。一緒に部活行こ?」
女の子の声が聞こえる。誰なの?どうしてヒロト君と一緒に?
「俺、後から行くから…」
「そんな事言って…本当は愛菜と行きたいんでしょ?彼女さんに疲れたなら愛菜と付き合お?」
「いや、だから…」
「だって、彼女さんと別れたんでしょ?疲れたから、って」
え…?そんな事になってたの…?私達、別れてないのに…。それに、疲れてる原因が私…?私に、疲れた…?
「え、お前天晶と別れたのか?」
「いや…」
「え?別れたんじゃないの?だって、彼女さんだって、そこで気まずそうに立ってるよ?」
は、え?バレてたの?
「瑠璃⁉︎」
『あ、えっと、違くて、これは…!』
「彼女さんと別れたなら、愛菜が貰って良いよね?だって、サッカー部のマネージャー辞めたのも、ヒロト君と別れたからでしょ?」
え、違うよ…!私はバレエをやりたかったから…!
『ち、違うよ!』
「怪しいなぁ…。ヒロト君、部活始まるしもう行こうよ」
「ちょ、ちょっと待って…!」
何、この修羅場な雰囲気…。ヒロト君と話していた男の子もオロオロしてるし。ああ、最悪…。
『あのさ、橋本君。この事、他言無用だからね?』
威圧感を掛けながら話しかけた。