第22章 Stick! 〈天晶 瑠璃〉
「瑠璃、さっきやった事をもう一度繰り返すわよ。小さい時にもうトウシューズは履けたらしいけど、成長して大分変わっただろうから、初心者と同じように教えるわ。それで良いわね」
『はい、お願いします』
「バーレッスンは他の子もいたから、あまり長い時間見てあげられなかったの。もう一度やって貰える?」
『はい』
何回もやればきっと出来るようになる。でも、ガムシャラのままじゃ駄目。どうやって間違えて来たのかを踏まえてより良くなる様に努力していかなきゃいけない。
「体の軸を意識しなさい。偶に気が抜けて曲がる時があるわ」
『はい』
「そう、その体制を意識して保って」
『はい』
私は、どうやら体の軸がぶれやすいらしく、度々先生に注意された。
「皆、今日はこれで終わり。着替えて気を付けて帰りなさい」
『はい。ありがとうございました』
「瑠璃」
『はい、なんですか?先生』
「瑠璃はまだ始めたばかりだから、今度の発表会は手伝い役として来て欲しいの。予定は大丈夫かしら」
『はい、大丈夫です。何をするんですか?』
「アナウンスや、案内をお願いしたいの」
『はい、分かりました』
そうか、発表会が近いんだっけ?まぁ流石に入ったばかりで出られるなんて都合の良い話は無いだろうから、補助員で丁度良いと思う。
「話は以上よ。気を付けてね」
『はい』
バレエレオタードから制服に着替えて、ビルから出た。すると、もうビルの前にはヒロト君が待機していた。
『ヒロト君、待っててくれてたんだ』
「俺も今来たところだから、大丈夫」
『ありがとう、帰ろうか』
「ああ」
ヒロト君も疲れてるのに、なんか悪いなぁ。いつも送ってくれるし、本当に有難い。
「瑠璃、今度の日曜、練習試合があるんだ。予定大丈夫?」
『うん、何処と試合なの?』
「先峯高校ってところらしいんだ」
『お弁当持って見に行くね』
「ああ」
ヒロト君、なんか疲れてるな…。部活で何かあったのかな。星羅ちゃんに聞いてみよう…。
『送ってくれてありがとう。また明日ね』
「ああ」
家に帰って夕食を食べて、弟達を寝かし付けるまで、毎日一緒の手順。その後、星羅ちゃんに聞いてみた。
〈ヒロト君、サッカー部で何かあった?〉
すぐに既読がついて、返信が来た。
〈特に何も無かったよ。どうかしたの?〉
〈元気なかったように感じたから、どうかしたのかなって〉