第3章 Burn! 〈朝日奈 乃愛〉
『起きれるかな...』
「それはお前でなんとかしろ」
『はぁーい』
なんだか豪炎寺ってお父さんみたいだな。
『これから部活動体験か...』
「お前は軽音部か?」
『そうだよ!あれ、言ったっけ?』
「いや、軽音の発表の時に異様に目が光ってたからな」
『ちょっと、その表現は変態みたいだからやめてよ。でも演奏凄かったでしょ?』
「あれは俺も驚いた」
『ほらぁ』
「よーし皆ー、帰りにSHRやるぞー。席つけー」
先生が教室に入ってきたと同時に皆蜘蛛の子を散らすように自分の席へと走っていった。HRは大事な情報以外は聞き流して終わるのを待った。そして、放課後。
『それじゃあ豪炎寺、日曜日ね!』
「ああ。寝坊するなよ」
『だ、大丈夫だって!ばいばい!』
手を振って一目散に軽音部の部室へと走った。一番乗りだったみたいで、部室には先輩方しかいなかった。
「あ、もしかして体験入部の子?これからライブするから、座って見てってよ」
『あ、はい!』
しばらくすると沢山の人が集まってきた。
「それじゃあ、これからライブします。他の部活見たかったら好きな時に抜けて良いからね」
先輩方が演奏していたのはバンド初心者が良くやるらしい王道のラブソング。凄いなぁ、基本の曲でもこんなに感動するなんて。
「ありがとうございました。これから楽器体験するから、触って見たい人は前に詰めてね」
私はボーカルだからな...楽器には触れないと思うけど...。
「君は何の楽器がやりたい?」
『私、ボーカルをやってみたいんです』
「お、良いね。マイクあるから歌ってみる?さっき歌った曲で良ければ僕達が合わせるよ」
『良いんですか?』
先輩の言葉に甘えてマイクの前に立った。凄い、こんな景色なんだ。
「私がスティックで、1、2、1234ってリズム取るから、入ってね」
『はい!』
息を大きく吸って吐く。緊張する。結構視線が集まっているけど、歌えるなら、全然気にしない。先輩のカウントが始まる。歌うんだ。響け!
「わぁ...」
「こりゃ期待の新人だね」
楽しい!音楽に合わせて歌うのが楽しい!こんな事、初めて経験した。皆私を見てる。私は、届けたい。私の声を。楽しい、もっと、と思っている間に曲は終わってしまった。
「凄いね!経験者?」
『いえ、初心者です!』
「ぜひ軽音部に入ってくれよ!」