第21章 Sink! 〈綾織 星羅〉
立ち上がろうとして痛みが走る。足を動かそうとすると痛い。
「星羅!」
『ごめんね…ぶつかって転んだら起き上がれなくなっちゃって』
「何があったんだ?」
『小さい男の子とぶつかっちゃって。でも、私が良く見てなかっただけだから。心配しないで』
「すまない…!」
『大丈夫だよ。ごめん、立ち上がるの手伝ってくれる?』
「ああ」
やっぱり痛かった。折角良くなったのに…。ちゃんと注意して歩けば良かった。
『…っ!』
「病院に行くぞ」
『でも…!』
「駄目だ。これ以上は危険だ」
『…分かった』
折角、楽しめてたのに…。私の不注意のせいで…有人君まで…。有人君が車を呼んで病院に一緒に向かってくれた。
『有人君、戻ってて良いよ。折角、一年に一度の文化祭だし…』
「お前が居なくては意味がない」
『で、でも…』
「俺が責任を持って見るという条件だったから医者も許可してくれたんだ」
『ごめん…なさい』
そっか、そこまで過保護だったのは、有人君に監督責任があったからなんだ。私、そんな事も知らずにリハビリの一環とか言っちゃった。最低だ、私。全部、無責任な行動を取った私が悪い…。
「尾てい骨の打撲だね。またもう少し安静にしてね」
「すみません…俺の責任です」
『ち、違います!彼の責任じゃ…!』
「まぁ、大勢いたから仕方ないね。それじゃあ病室に戻ろうか」
『…はい』
全部、私のせいだ。私が、浮かれてたから…。病院に戻って、ベッドに入った。
『ごめん…ごめんなさい…!』
申し訳無くて涙が溢れてくる。乃愛ちゃんのライブだって見たかった。でも、一番は有人君をここに連れてきてしまった事。
『本当に、ごめんなさい…。私のせいだ…。折角の文化祭なのに…大切な時間を奪っちゃって…』
「気にしなくていい。だから泣くな」
『有人君、今からでも戻って…?折角の文化祭なんだから…』
「お前が居ないと意味がないとさっき言っただろう」
『でも…!』
顔を上げて説得しようとすると、有人君が私の両目尻に口付けた。
『!』
「泣き止んだか?」
『けど…!』
「俺はお前と居れば何処だっていい。病室だろうが、学校だろうが。それに来年も文化祭はある。来年は今年の分まで楽しめばいい」
『…』
「もう寝ろ。今日は特に足の負担も大きかっただろうからな」
『ごめんね…?』
「大丈夫だ。寝るまで側にいてやるから」