第21章 Sink! 〈綾織 星羅〉
『はい。少し休ませて貰いたいんですけど、良いですか?』
「勿論。お菓子と飲み物あるからゆっくりしていってね」
保険の先生はニコリと微笑んで紙コップを用意してくれた。お礼を述べてコップにお茶を注ぐ。いつもより沢山歩いてるから少し痛いけど、暫く休めば多分大丈夫。スマホを見ながらゆっくりする事にした。
「綾織さん、ですよね」
『はい、そうですけど…』
「私、隣のクラスの櫻小路 椿姫と言います。これ、貼って下さい」
『え…?』
「足を怪我されたと聞いたので、湿布どうぞ」
『ありがとうございます』
「ここに衝立立てて置くので、良かったら使って下さい」
『すみません』
なんて親切なんだろう。本当に有難い。
「おい、椿姫」
「びっくりするから、勢いよく開けないで下さい」
「お前、シフト何時に終わんの?」
そういえばこの人見た事ある。中学生の時、有人君と同じイナズマジャパンだった。確か不動 明王君だったかな。仲はあんまり宜しくは無いと聞いたけど、今は流石に普通なんじゃ無いかな。
「あと三十分です」
「じゃ、それくらいに迎えに来るわ」
「はぁ…」
随分と元気な人なんだなぁ。しかもモヒカンだし。校則大丈夫なのかな?今更気にしても無駄か。
「すみません、お騒がせしました」
『いえ、湿布ありがとうございました。衝立も助かりました』
「折角一年に一度ですから、楽しんで下さいね」
「星羅」
『有人君』
「そろそろ、昼食の時間だから何か買いに行かないか」
『うん。櫻小路さん、ありがとうございました』
「いいえ。楽しんで下さいね」
櫻小路さんに手を振って別れた。体育祭に売店や飲食スペースがあるから、第一体育館に向かった。
『凄い…いっぱいあるね』
「ああ。俺が買ってこよう。何か食べたいものはあるか?」
『じゃあ、私カレーお願いして良いかな。有人君が行ってる間飲み物買ってくるね。まだお昼より前だから席も空いてるし』
「分かった。無理はするな」
『うん』
自動販売機で飲み物を買って、戻ろうとしたその時だった。小さな男の子がぶつかってきて、後ろに転んでしまった。
「すみません⁉︎大丈夫ですか⁉︎」
『大丈夫です、気になさらないで下さい』
「本当にすみません…ほらあんたも謝りなさい!」
「ぶつかってきた方が悪いんだ!」
『私、本当に大丈夫ですから。是非文化祭楽しんで下さいね』