第21章 Sink! 〈綾織 星羅〉
『ありがとうございます。そういえば、説明は何時からですか?』
「人が一杯の時点で始まるから早いもん勝ちだ。お前達が一番最初だから好きな所に座って良いぞ」
「分かりました。大丈夫か、星羅」
『うん。ありがとう』
中に入ると、暗幕で光を遮っていて、何故だか少し神秘的な感じがした。
『古代ローマといえば、アウグストゥスってイメージがあるんだけど…皇帝、だったっけ?』
「ああ。後は暴君ネロも良く聞くんじゃないか?」
『私、その辺の話好きだからピックアップしてくれると嬉しいなぁ』
「世界史好きなのか?」
『うん。小中ってずっと本読んでて、特に古代ローマの伝記ものが好きだったの』
「中学ではその辺の話はやらないからな」
『高校でやっと出てくるくらいじゃないかな』
日本史も嫌いじゃないけど、世界史の方が面白くて好き。個人差はあると思うけど。
「なら、世界史についてはお前に聞けば大丈夫そうだな」
『そ、そこまで博識じゃないよ』
有人君と話していると、結構人が集まってきて、もうそろそろ始まるからみたいだった。話してくれる内容は、丁度古代ローマ九代皇帝の話だった。これで、雑学が積まれていくんだと思うとちょっと嬉しくなる。でもそんなに雑学を披露する状況なんてないと思うけど。
「終わったな」
『面白かったね。私聞き入っちゃった』
「そうだな。興味深かった。…もうそろそろシフトの時間だ」
『行ってらっしゃい。私、休憩室に居るから』
「送ってから行く」
『時間は?』
「後十分はある。大丈夫だ」
『良かった。それじゃあお願いして良いかな。一階まで降りなきゃいけないし…』
「あまり人が使わない理科棟の階段を使うが、それで良いか?」
『うん、ありがとう』
ゆっくり歩いて、階段を目指した。やっぱり北校舎や中校舎は賑わっているけれど、理科棟は静まり返っている。というか、触られたら危ない物もあるから立ち入り禁止になっている。
「階段だ。気を付けろ」
『ごめん、遅くなりそう…』
「気にするな。お前のペースでいい」
手を握ってくれてるから随分と降りやすい。手摺と有人君の手を握りながらゆっくり一階まで降りた。
『送ってくれてありがとう。私ここで待ってるね』
「ああ」
休憩室はいつも保健室として使っている所で、保健の先生が待機してくれている。
「あら、綾織さん。身体は大丈夫?」