第21章 Sink! 〈綾織 星羅〉
「そろそろ始まるから、切ったゴミとか片付けてー!」
『はーい』
立ち上がろうとすると、少し痛みが走った。大丈夫、皆に心配かける訳にはいかないんだ。
「俺が捨ててくる。これで全部か?」
『だ、大丈夫だよ。これくらいなら私でもできるから…』
「今、一瞬痛みを感じただろう」
『それは…』
「俺に、やらせてくれないか。心配…なんだ」
『大丈夫だよ。お医者さんもこれ以上は酷くなる事は無いって言ってたし、リハビリも兼ねてやらせてよ。ね?』
「…仕方ない。何かあった時は呼んでくれ」
『うん。ありがとう』
ゆっくりゆっくり歩き出す。いつものスピードより少し遅いけど、ここまで回復したなら大丈夫だと言う事で実は今日一日だけの復帰なのだ。明日からはまた病院のベッドらしい。どうやら私は回復が遅い方らしくて、もう少しかかるみたいだ。折角の公開文化祭だからという理由で特別に許可してもらった。但し、歩く際には一時間以上は歩き続けないようにとは言われた。
「随分良くなったな」
『リハビリ頑張ってるんだけど、回復が遅いみたいで。まだちゃんと退院するには時間かかりそうなんだ』
「無理のし過ぎは良くない。自分の体調と相談しながらやらないといつか身体を壊すぞ」
『有人君は過保護だなぁ。でも、気をつけるよ。いつもリハビリは一時間きっかりしかやってないんだけど、明日は少しお休みしようかな』
「そうすると良い。今日は沢山歩くだろうからな」
『うん』
文化祭開始の鐘がなって、人が雪崩れ込んでくる。校内に居るうちに、人気が出そうな所に行く事にした。
『なんか、古代ローマの解説してくれる所あったよね』
「ああ。先輩達のクラスにあったな」
『最初に行ってみたいな。なんか混みそう』
「じゃあ行くか」
『うん』
「ゆっくりで良い。人が三階に来るまでにはまだ時間がかかる」
『ありがとう』
私達の教室は中校舎にあるけど、先輩達の校舎は北校舎だから渡り廊下を渡って先輩達の教室に向かった。
「お、鬼道じゃねぇか。あと、綾織ちゃんも。俺達のクラス見に来てくれたのか?」
「はい」
『私が見たくて…』
「そういえば、身体大丈夫か?あんまり無理すんなよ」
『はい、すみません。今日は特別な許可で来れたんですけど、まだ正式に退院は出来ていなくて、部活に戻って来るのはもう少し先になりそうで…』
「良いって良いって!無理すんな!」