第21章 Sink! 〈綾織 星羅〉
文化祭当日。今日は文化祭に参加できる。皆まだ暑いから半袖着てるらしいけど、私は痣を隠したかったから、長袖のブラウスに袖が余るくらい長いカーディガン。黒いタイツにマスクを付けた。
「星羅」
『有人君。ごめんね、待たせちゃった』
「大丈夫なのか」
『うん、普通に歩けるよ』
「そうか」
あれから、入院してた二週間、必死にリハビリを頑張ってなんとか歩けるようにまでなった。ゆっくり歩くのが今は限界で走るのはまだ止められている。
『今日は有人君後夜祭まで居るの?』
「お前が居たければ居るが…大事を取って今回はそのまま帰った方が良いんじゃないか?」
『そうだね、来年もあるし…』
「後は、なるべく混んでいる道も避けた方が良いな」
『ごめんね、気を遣わせちゃって』
「いや、良いんだ。取り敢えず、今日は安全を第一に考えてくれ。お前はシフトに入っていないから、俺がシフトに入っている間はあまり無理はしないでくれると助かる」
『うん。休憩所で休んでるよ』
「ああ、迎えに行く」
なんか、入院してから急に過保護になったんだけど…。私、歩けない事は無いから大丈夫だと思うんだけど…。
「星羅!」
『夏未…』
「心配したのよ!」
『ごめんね。でも大丈夫、歩けない事は無いから』
「こんな暑い中長袖にタイツまで…」
『皆痣とか気持ち悪いの見たくないでしょ?だから隠しておこうと思って』
「そう…無理しちゃダメよ!悪化したら元も子もないのだから」
『う、うん。ありがとう』
教室に戻って来ると、皆暖かく迎え入れてくれた。もう直ぐにでも始められる雰囲気でせっせと開始に向けた準備を進めている。
「星羅、そこに座ってた方が良い。立っていると足に負担がかかるからな」
『ごめんね、ありがとう有人君』
凄い速さで有人君が椅子を持ってきてくれた。だからそんなに過保護にならなくても…。
『私の事は大丈夫だから、皆の手伝いしに行ってあげてよ。きっと皆有人君の力が必要だと思うから』
「…分かった」
『ついでに、座ってても出来る事無いか聞いてきてくれると嬉しいな』
「ああ」
皆の中に混ざって何かを聞いてきたのか、私の所に戻ってきた。
「この飾りを切ってほしいそうだ。案外殺風景だったから、取り敢えず付けられるだけ付けるらしい」
『分かった。ありがとう』
筆箱から鋏を取り出してひたすら飾りを切った。