第20章 Hold! 〈朝日奈 乃愛〉
『も〜。あれ、そういえばもう少しで閉会式じゃない?』
「そうだな」
『教室に一回戻ってみよっか』
「ああ」
教室に戻ってみると、まだまだ盛況の様で、絶え間なくお客さんが教室へ入っていた。
『お疲れ〜!』
「乃愛!お疲れ!ライブ見てたよ!」
『ほんと?ありがと!』
「乃愛」
『アフロディもお疲れ。後で録った奴送るから』
「ああ、頼むよ」
暫く教室で談笑していると、終了を告げる鐘が鳴った。その鐘と同時に、段々と人も帰って行った。閉会式も終わって教室に戻ってくる。片付けは明日から。後夜祭はいろんなイベントがある。
『豪炎寺、後夜祭もいる?』
「そのつもりだ」
『じゃあさ、一緒に後夜祭の花火見ようよ』
「ああ」
本当は体育館とかでイベントもあったけど、花火を見ていたかった。最後に、なるかも知れなかったから。
『どうせなら、屋上行かない?』
「そうだな」
豪炎寺と一緒に屋上に行った。空は既に暗く染まっていて、もうすぐ花火が始まりそうだ。
『疲れたね』
「ああ。丸一日動き回ってたからな」
『でも、楽しかった』
「そうだな。お前も存分に怖がれたんじゃないか?」
『その話はもう良いの!ほら、花火始まったから!』
無理矢理話を逸らして、花火に目を向けた。私が日本を発つまで後一週間。理由は、両親に呼ばれたから。あれ以来、話し合う機会が無かったから、少しで良いから話してみたいと思った。でも、丁度アメリカを発つ日に私が住んでいる家は売る事になっている。
『綺麗だね』
「ああ」
アメリカに行ったら、豪炎寺には会えなくなる。それが私にとって一番辛い事なんだ。でも…わがままは言っていられない。君とずっと一緒に居たいって素直に言える関係だったら。
「終わったな」
『…うん』
気付いたら花火は終わってしまっていた。せっかく一緒にいれる時間だったのに、もう、終わっちゃう。
『帰ろうか』
「そうだな」
帰宅する時も、何故か気分は晴れない。お父さんとお母さんに会えるのに。どうして、こんなに沈んだ気持ちになるの。
ーー六日後
今日は学校を休んで、家の最終確認だ。置き残した物はないかとか、荷物というか、家具は大体売ってしまった。衣類とかはトランクに詰めてある。豪炎寺には、今日は用事あるから先に行っててって話してある。
『ふぅ…』
実際、こうも家具が無いと何もできない。