第20章 Hold! 〈朝日奈 乃愛〉
『うん!よろしく!』
そう言って、体育館に向かった。やる事は沢山ある。発声をしたり、もう一度順番の確認をしたり。
「朝日奈!」
『あれ、氷君どうしたの?』
「皆集まったから、先にミーティングをしないか」
『オッケー。行こう』
今日は三曲しか演奏できない。時間が限られているから、そんなに多くの曲は演奏できない。だから自信のある三曲で臨むことにした。
『今日は何も言う事は無いよ。自分達の出来る精一杯を出し切ろう』
「勿論」
「ああ」
「おう!」
「は、はい!」
『風花。緊張するのは良いけど、まずは自分が楽しめるようにしよう』
「自分が…楽しめるように…」
『そう、自分達が楽しくなきゃお客さんだって楽しんでくれないよ』
「…うん!」
良かった。多分、少しは緊張が解れたと思うんだけど…。
『Elenoahの初ライブ、頑張ろう!』
おおー!という掛け声と共に人差し指が天井を指す。こういうの、本当に青春っぽいなと思いながらメンバーと笑いあった。そして、遂にライブの時間になった。
『皆さん、こんにちはー!私達はElenoahです!今日は短い時間ですけど、楽しんでいってください!最初に演奏する曲は…』
体験入部で最初に歌った曲。私を、歌う事の素晴らしさに引き込んでくれた曲。暗い席の向こうに豪炎寺が見えた。ここに、居てくれてる。それだけで元気が出る。
『ありがとうございます!次の曲は…』
次の曲は少し難易度が高かったけど、皆歌詞に共感して是非とも演奏したいって何とか間に合わせた。でも、この曲を選んだ事に後悔はしていない。だって、それ以上に皆、この曲を演奏したいって想いで一杯だったから。
『いよいよ最後の曲となってしまいました。最後まで楽しんでいってください!』
最後の曲は私達が一番頑張った曲だった。この曲は、青春ソングで今迄頑張ってきた事を思い出せるから、一際想いを乗せて歌う。歌う事が、大好きだ。私…歌う事やっぱり好きだ!
『ありがとうございました!これで私達のステージは終わりです。皆さん楽しんで頂けたのなら何よりです!ありがとうございました!』
拍手喝采で、長い時間鳴り響く拍手の音。凄く、気持ち良かった。こんなに達成感を感じたのは久し振り。ステージを降りて、教室に戻ろうとしたその時だった。
「ちょっと良いかい?」
『はい?』
「私はこういうものだ」