第18章 Hang! 〈天晶 瑠璃〉
取り敢えずコピーしている間に何個か調べよう。ファイルの奥底にある「X」という名のファイルを見つけた。これって…。内容を軽く目を通すと、保険の教科書で見たような麻薬の名前…。それに、私の家族や親戚をどう陥れるかを書いてある文書まで…。これなら…!漸くコピーが終わって、USBを抜いた。
『乃愛ちゃん、終わったよ』
「豪炎寺達と合流する?」
『ううん。まずは指示があるまで待ってた方が良いと思う』
「じゃあ、つっかえ棒はこのままにしておくね」
『うん。ヒロト君…聞こえる…?』
「ああ、終わった?」
『うん、コピーも取れた。ヒロト君達は大丈夫?』
「ああ。今から豪炎寺君とそっちに向かうよ。待っててくれ」
『うん、警備に気を付けて…』
暫くすると、最初に豪炎寺君、次にヒロト君が入ってきた。二人共、相当走り回って疲れた様で、息も切れていた。
「大丈夫?豪炎寺」
「ああ」
『ヒロト君も大丈夫?』
「ああ、後は抜け出すだけだね。外には鬼瓦刑事が待機してくれているから、まぁ出れば終わりだと思ってもらえれば良いよ」
『私達は大丈夫だけど…星羅ちゃんが…』
「そっちには鬼道君が向かっているから大丈夫だ。取り敢えず、早く此処を出よう。このままだと監視が戻ってきてしまう」
そうヒロト君が言ったと同時に足音が近付いてきた。やばい…戻ってきた…!扉の前に影が見える。
『戻って…来ちゃった』
「もう少し早く出れば良かったね」
「どうする?」
この時、星羅ちゃんならどんな打開策を考えるだろう。星羅ちゃんが居ない今、私が考えないと…。そうだ、分かった!
『皆、聞いて欲しいんだけど…』
作戦はこうだ。まず、情報室にあった資料の束を机から落として物音を立てる。不審に思った警備員が中に入ってくる。警備員が近付いて不思議がっている内に逃げる。此処で見つかっても、影は一つしかないから、他の警備員が来るまで多少なりとも時間がある。
「今のところ、それが一番良いんじゃないかな」
「皆、良い?落とすから隠れててね」
『うん』
乃愛ちゃんが積み上がった資料を床へ落とした。直ぐに戸棚の脇に隠れたから多分大丈夫。
「なんだ?」
警備員が入ってきた。資料に一番近付いた時、そこが一番のチャンス。…今だ!
隠れていた所から皆一斉に出てきて、出口へ向かった。後は出口に向かうだけ…!
「待て!」