第17章 Bleed! 〈朝日奈 乃愛〉
『いきなり重い話で申し訳ないんですけど、実は…婚約者にストーカーされて困ってるんです。家の中にも無断で入っていて…』
「出来ればの範囲内で構わないが、証拠はあるか」
『はい、これで、良ければ…』
画面を出来るだけ見ないようにスマホの画面を鬼瓦さんに見せた。スマホを持つ手が若干震えている。
「すまないな。辛いものを…」
『いえ…。私、私が犠牲になるなら、まだ良いんです。でも、この人を野放しにしておくと他に被害が出てるんじゃないかって…』
「分かった。お前さんがこんな辛い思いをしているのに動かない訳にはいかんよ。俺が責任を持ってこの件を預かる。お前さんは安心して待っててくれ」
『本当に…ありがとうございます…』
安心した所為か、涙が溢れてしまった。良かった…。
「よっぽど我慢していたんだな。安心して良い」
『はい…』
そのまま家に帰って一息ついた。安心したのに、まだ震えてる。
「お姉ちゃん、お帰り!今日はお兄ちゃんと一緒じゃないの?」
『うん。今日は用事があって。これから夕飯作るね』
夕飯も作り終わって、一息ついた時に電話がかかってきた。
「もしもし、鬼瓦だが」
『あ、鬼瓦さん、どうかしたんですか?』
「実はな、ある事実が判明した。お前さんの家に入るのに、お前さんの両親から鍵を貰っていたんじゃなくてな、ピッキングで開けていたそうだ。お前の両親から連絡が取れた」
『えっ…お父さんとお母さんが…』
「お前さんは家族関係でも随分辛い思いをしたそうだな。これからはもう大丈夫な筈だ」
『え、』
「取り敢えずそういう事だ。無事に逮捕出来るから安心しな」
『ありがとうございます…!』
電話が切れて、豪炎寺の方を向いた。
「何だったんだ?」
『鬼瓦さんから。あの人、逮捕するって』
「…そうか!良かったな」
『うん…!』
本当、良かった…!もう、怯える事もなくなる!
「これで登校も安心だな」
『本当。今凄く安心してるのに、まだ震えてる…』
「大丈夫だ」
豪炎寺が手を握りしめてくれる。暫くすると震えも止まった。凄い…魔法の力だ!
『ありがと』
「夕香の時も、いつもこうしてやってるんだ」
『流石お兄ちゃん』
「よせ」
『あはは、ごめんごめん。そういえばさ、文理選択どうした?』
「俺は理系だ」
『そっか、私と一緒だね』
「文系だと思ったが、理系なんだな」