第17章 Bleed! 〈朝日奈 乃愛〉
「本当に、良いんだな」
『はい。今決めた事ですけど、でもこの意思は揺るぎません。私は、豪炎寺君の為に何かしたい思いで一杯なんです』
「分かった。ありがとう。こんな俺の話を聞いてくれて、しかも俺の願いまで叶えてくれて」
『恋ってそういうものなんです。好きな人の為なら、何でもしたくなる』
「はは、若いのは良いな」
『お父さんだって忘れていない筈ですよ。お弁当です。頑張って下さい』
「ああ、ありがとう。修也を、頼む」
『はい。気を付けて』
パタンと扉が閉まる音がして一気に静かになる。自分の昼食を完成させて、リビングでテレビを付けながら昼食を食べた。食べ終えてから、用意して貰った部屋に戻って、文理選択の紙を取り出して理系に丸を付けた。
『これで、大丈夫』
勢いで決めた事だったけど、何も後悔してなかった。歌うのも好きだけど、それは趣味の範囲の話であって、実は将来の夢は明確には決まってなかった。でも、きっかけをくれたのは、間違いなく豪炎寺と、豪炎寺のお父さんだ。
「ただいまー!」
夕香ちゃんの声が聞こえた。そうか、小学生だから帰りが早いのか。
『お帰り、夕香ちゃん』
「お姉ちゃん!一緒に宿題やろうよ!」
『うん。良いよ』
「やったあ!夕香、荷物置いてくる!」
小学三年生って言ったら何やってたかな。六年も前の事だから覚えてないな。
「今日はね!分数の宿題が出たんだ!」
『そっか。分数はこれから大事になるからちゃんと勉強するんだよ』
「うん!」
でも、見ているとスラスラと出来ているようでやっぱり凄いなって思う。豪炎寺家皆優秀…!
「お姉ちゃん、足大丈夫?」
『うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう』
「そっか、気を付けてね」
『うん』
すると、また手を動かし始めて今度は国語のプリントをスラスラ解いていた。私も、何かやらなきゃ。医者になるには成績ちゃんと維持しないと。
『お姉ちゃん、部屋から勉強するもの持ってくるね』
「うん」
もう少しで古文の今の単元終わりそうだし、予習しとかないと。後はC英の予習も進めておこう。
「お姉ちゃんの、なんか難しそう」
『でも、ちゃんとコツコツやれば力は付いてくるよ。継続は力なりって言うしね』
「そっか、やっぱり高校の勉強は大変なの?」
『うん。教科が凄く多いから予習大変かな。復習も大切だし、やる事沢山あるんだ』